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心のどこかで「いつまでも生きていたい」と思っていませんか?

それが家族を苦しめるかもしれない

いつまでも長生きするつもりのあなたに

「日本人は『命の期限』についてのリテラシーが低いと思います。命には限りがあり、人間はいつか必ず死ぬのです。それなのに、縁起が悪いからという理由で、現実を直視せず、逃げてしまう人が多い。しかし、人生はいつ何が起こるかわかりません。何も考えていないと、大変な目に遭うのは家族や周りの人たちなのです」

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そう語るのは、諏訪中央病院名誉院長で、作家の鎌田實氏だ。

あなたは心のどこかで「いつまでも生きていたい」と思ってはいないだろうか。もちろんそんなことが不可能なことはわかっているが、自分が死ぬ姿など想像できないし、考えたくもない。だから、自分の死に関わることについて、考えるのを避けてしまう――。だが、その姿勢は、大きな誤りかもしれない。

 

『日本人の死に時 そんなに長生きしたいですか』などの著書がある、医師で作家の久坂部羊氏が話す。

「いつまでも長生きできるのでは、と漠然と思っている人は多いでしょう。背景には、日本の平均寿命が世界トップクラスであることや、『人生100年時代』というキャッチフレーズが喧伝されていることが関係していると思います」

7月30日に厚生労働省は最新('18年版)の「簡易生命表」を発表した。確かに平均寿命は男性が81・25歳、女性が87・32歳と、いずれも過去最高を更新している。そんなニュースを見ながら、ボーッと生きていると、痛い目に遭う。

埼玉県在住の岡本正氏(85歳・仮名)は、今年の正月、50代の息子と娘が家族を連れて自宅に遊びに来た際、ある話を耳にしてしまったという。

「他のみんながいる居間とは別の部屋で息子と娘が話していたんです。トイレに行く際、そっと何を話しているのか聞いてみたところ、『父さんの葬式は区民斎場でいいよね』『実家はいまのうちに売却しよう』と話していてギョッとしました」

岡本氏の妻は10年前に亡くなっている。岡本氏自身は5年前に脊柱管狭窄症を患い、移動は多少不自由だが、それ以外はいたって健康だ。

自分の死を具体的に考えたこともなかった。妻が亡くなった少し後に、息子から銀行口座をいくつ持っているかなどを聞かれたことはあった。しかし、「俺の財産を狙っているんじゃないか」と思い、相手にしなかったという。