2019.09.05

動物にやさしかった子どもが史上最悪の大量虐殺を実行するに至る経路

赤ん坊のヒトラーを殺しますか?
ジュリア ショウ

性的に奥手で、動物をいたぶらない子どもだった

彼の脳を再現する前に、まずヒトラーは頭がおかしかったのか、悪人だったのか、その両方だったのかを考える必要がある。ヒトラーに関する初期の心理プロファイルのひとつが書かれたのは第二次世界大戦中のことだ。それは史上初の犯罪者プロファイルのひとつとされ、米国の情報機関である戦略諜報局(中央情報局の前身)に所属していた精神分析学者ウォルター・ランガーが一九四四年に書いたものだ。

その報告書には、ヒトラーは「神経症」「ほとんど統合失調症」であり、思想的な不死を求め、敗北すれば自殺するという正確な予測がなされていた。とはいえ、その報告書には、(苦痛と辱めを受けるような)マゾヒズム的セックスを好み、(糞を食したがる)「汚食症」の傾向があったなど、不確かな疑似科学的な主張も数多く書かれている。

一九九八年に別の心理プロファイルが発表された。精神医学者フリッツ・レートリヒによるものだ。レートリヒがおこなったのは彼が病跡学――病気から影響を受けた人間の人生と人格の研究――と呼ぶものだ。

ヒトラーの病歴および家族の病歴、演説や文書を調べたレートリヒは、ヒトラーはパラノイア、ナルシシズム、不安神経症、うつ病、心気症といった多くの精神症状を見せていたという。しかし、「精神医学の教科書を網羅できるほど」多くの精神症状の兆候があるとしながら、「人格の大部分は十分以上に機能し」、ヒトラーは「自分の行動を理解し、自尊心と熱意を持ってそれを実行することを選んだ」と主張する。

 

彼は赤ん坊のヒトラーを殺害したいと思ったのだろうか? それとも、ヒトラーの生い立ちのほうを重視したのだろうか? レートリヒは、ヒトラーの子ども時代には、将来、大量虐殺をおこなう悪名高き政治家になると示唆することはほとんどなかったという。医学的な観点から見れば、ヒトラーは性的に奥手で、動物や人間をいたぶることを好まない、まったく普通の子どもだったと彼は主張する。

関連記事