高齢の家族が「転んで死んでしまった」遺族たちの悲しみと悔恨

坂道を転がるように具合が悪くなる
週刊現代 プロフィール

転倒はいつでも、どんな状況でも起きる。それによって人格さえ変わり、家族ともコミュニケーションが取れず死を迎えてしまう。次の瞬間に誰にでも起こりえる、そこに転倒の恐ろしさがある。

「そもそも、がんは病気です。治療や診断が難しく死亡率も高い。ですが、医療技術や基礎研究の進歩によって、末期でなければ治る可能性のある病気になってきています。

その一方で、転倒は病気ではなく事象。加齢や生活習慣、運動不足、服用している薬の副作用など、あらゆる原因がもとで転倒事故が起きる。その意味では、がん以上に多くの人に降りかかってくる可能性があるんです」(日本転倒予防学会理事長の武藤芳照医師)

 

では、人は転倒のリスクの前に為す術もなく、ただ怯えるしかないのだろうか。そうではない。

「究極的には、今後どんなに世の中のバリアフリーが進んだとしても、高齢者は単純な体重移動だけで簡単に転んでしまいます。現実問題として転倒事故をゼロにすることは難しい。

ですが、日常的な運動を心がけることで、転倒の予防はできる。そして、もし転倒したとしても骨折しないくらいに体を強く保つことが重要になるのです」(NTT東日本関東病院の大江隆史医師)

転倒するのが怖くて自宅や老人ホームに引きこもってしまうのは本末転倒。健康な生活を送るためにも、積極的に外出することは必要だろう。

もちろん、歩かなければ転倒事故が起きることはない。その意味で逆説的ではあるが、毎日の散歩や運動を心がけることで、転倒してもそこから立ち直ることだってできるのだ。

『週刊現代』2019年8月24・31日号より