「転んで死ぬことになった」60代以上の人たち…その悲しすぎる結末

60すぎたら、転んではいけない
週刊現代 プロフィール

慢性硬膜下血腫とは、脳を覆う硬い膜(硬膜)と脳の間に血が溜まってしまう病気。それまでは何をするにしてもキビキビと動き、働き者だった千恵子さん。だが、慢性硬膜下血腫を起こしてからはふさぎ込みがちに。そんな彼女を追い込んだのは、皮肉なことに息子の一言だった。

重田さんの家族は二世帯住宅で、息子夫婦と同居。長男は転倒事故を起こした千恵子さんの身を案じ、「母さん、心配だからもう余計なことはしないでくれ」と、善意で進言したのだ。

精力的に家事をこなすことで毎日の刺激を得ていた千恵子さんにとって、その言葉はショッキングなものだった。

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慢性硬膜下血腫は深刻な病気である一方、安静に過ごして適切な治療とリハビリを受ければ完治を望める病でもある。

だが、息子の言葉を聞いて「また転んだら、もっと家族に迷惑をかけることになる。今でさえ、私は夫や息子夫婦にとってお荷物になっている。もう、なにもしちゃいけないんだ」と、家事を放棄してしまった。夫の達夫さんが続ける。

 

「妻は完全に心が折れてしまったようで、生きる気力が萎えてしまいました。『みんなの迷惑になるから』と、なにもしようとしなくなった。そのうちご飯も受けつけなくなり、体重は激減。元は50kgあったのに、34kgにまで落ち込んでしまいました。

そんな状態になると硬膜下血腫を治すどころの話ではなくなります。免疫力が低下して、頻繁に風邪をひくようになる。そのままウイルス性肺炎にかかってしまい、あれよあれよという間に衰弱。肺炎を発症してから、たったの1ヵ月で死んでしまいました」

転ぶのはクセになる

60歳を過ぎたら、絶対に転んではいけない。畠山夫妻・重田夫妻の災難を見るとそう思わずにはいられないが、実際に高齢者が転倒から衰弱死するケースは数えきれない。実例を紹介しよう。

養護施設に入っていた80代女性が階段を下りている最中に転倒。傍にいたヘルパーが他の入居者に気をとられて目を離した隙に起きた事故だった。女性は大腿骨を骨折し寝たきり状態に。3ヵ月後、多臓器不全で死亡。
高血圧のために降圧剤を服用していた68歳の男性。夜、トイレのためにベッドから起き上がった瞬間、立ちくらみで転倒。降圧剤の影響で低血圧になっていたことが原因だった。ベッドの角で胸を打ち胸骨を骨折。折れた骨が心臓まで達し、出血多量で死亡。