「転んで死ぬことになった」60代以上の人たち…その悲しすぎる結末

60すぎたら、転んではいけない
週刊現代 プロフィール

当初、和夫さんは「一日でもはやく歩けるようになりたい」と、精力的にリハビリをしていた。だが、毎日のように通院して治療しても、一向によくならない。それどころか、手術から2ヵ月が経つ頃には状況は悪化。ベッドから起き上がろうとするだけで脚の付け根に激痛が走るようになっていた。

Image by iStock

「主人の症状は悲惨そのもの。生活のあらゆる場面で少し体勢を変えただけで、苦痛に顔をゆがめていました。

この頃から、夫は人が変わったように無気力になってしまった。リハビリのために一緒に病院に行こうと言っても、『あぁ、そうだな……。明日は行くからさ』と生返事をするだけ。転倒の瞬間を思い出してしまうのか、居間にいても動こうとしないんです。今までのようには歩けない。その事実を受け入れられないようでした。

 

外出はおろか、新聞を取りに行くのも面倒くさがるようになり、しまいにはちょっと手を伸ばせば届くようなテレビのリモコンまで私に取らせる始末。同時に、食事の量も減っていきました」

定年後は国内外問わず、毎年のように旅行に行くほど仲睦まじかった畠山夫妻。だが、和夫さんの転倒から関係が徐々に悪化していく。和夫さんは自由に歩けないストレスを文子さんに当たり散らすようになった。

手術から4ヵ月後、和夫さんにさらなる変調が訪れる。会話が不明瞭になり、文子さんの名前すらも出てこなくなってきた。認知症だ。

「転倒による骨折から回復できるかどうかは、リハビリを行う意欲があるかにかかっている。そこで一番怖いのが、まさにこの認知症です。

骨折や手術に伴う痛みによって、リハビリの意欲が低下してしまう。そうなると寝たきりの時間が増え、認知機能も減退してしまう。

このようにして骨折がきっかけで認知症になると加速度的に体は衰弱し、他の病気にかかったときには手術さえできない状態になってしまいます。だからこそ、転倒で骨を折ったときには認知症にならないため、早期にリハビリを開始しなければいけません」(お茶の水整形外科院長の銅冶英雄医師)