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死の直前に起きる「お迎え現象」「手鏡現象」は妄想か、本物なのか

何度も目の当たりにした人がいる

妄想や幻覚ではない

「末期がんに苦しんでいた60代の女性患者さんが、突然『先生、息子が迎えに来たんですよ』と言うんです。

その方の息子さんは、幼い時に事故で亡くなっていると知っていたので『本当ですか?』と尋ねると、『そう、成長した姿で迎えに来てくれたわ』と嬉しそうに話すんですね。この方は、それから1週間後に亡くなられました」

死の直前、目の前に亡くなった人や大切な人が現れる「お迎え現象」について実例をもとに説明するのは、湘南ホスピタルの奥野滋子医師だ。奥野氏は、これまで3000人を看取った際に、何度もお迎え現象を目の当たりにしてきたという。

実際、この不思議な体験をした人は少なくない。仙台市で緩和ケアを行っていた岡部健医師(故人)が、看取りを行った家族に実施した聞き取り調査では、366人中、実に42.3%の家族が「故人が亡くなる際、お迎えがあった」と答えている。

お迎えがあった場合、その1週間後に亡くなるという人が多いが、反対に時間がかかることもある。ふじ内科クリニックの内藤いづみ院長の話。

「私の母にも、お迎え現象がありました。末期がんであと1週間持つかどうかという時に、危篤状態になった。

その後、容態が安定した時に『お父さんが迎えに来たわ』と言うんです。こっちに来いと呼ばれたけれど、まだ行きたくないから行かなかった、と。母はその後、3年も生きました」

 

この不思議な現象はいったいなぜ起こるのか。超常現象に詳しい中部大学の大門正幸教授は、「お迎え」は日本に限らず世界中で認識されている現象だと説明する。

「中世の頃の文献にも、一命を取り留めた人が『神様を見た』と証言している記録が残っています。1920年代に、アメリカのウィリアム・バレットという学者が本格的に『お迎え』の体験の収集を始め、学問としての研究が進みました」

もともと「お迎え」は、高齢者が独り言を話したり、幻覚を見たりする「せん妄」の一種と考えられてきたが、錯乱状態というには穏やかだし、お迎えを見たという人の普段の意識ははっきりしているので、別の現象と認識されるようになったという。

大門氏が続ける。

「科学的には、脳の機能がだんだん衰えるにつれて、そうした現象が見えるようになるのではないか、と言われています。

たとえば瞑想を行うと神秘的な体験をする人が多くいますが、これは目をつむり、身体を閉鎖空間に置くことで五感を遮断し、意図的に脳の機能が弱まった状態を作ることで体験するものです。

『お迎え現象』もこれと同じく、死の間際、脳の機能が弱っていく中で、通常は知覚できないものを知覚するのではないか、と考えられています」