遺産が親族に「早いもん勝ち」で奪われる時代の傾向と対策

争続に負けないための「8つの方法」
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預金についても、新制度を悪用されるリスクが浮上しており、対抗策を知っておく必要がある。

東京都在住の松本佳代さん(60歳・仮名)は肩を震わせながら語る。

「姉に私がもらう遺産を取り逃げされました。新制度にこんな罠があるとは知らなかったです」

今年7月に父親が亡くなり、長女の幸子さん(64歳・仮名)と次女の佳代さんが相続することになった。遺産は不動産900万円と預貯金900万円で、遺言書はない。

「遺産分割の話し合いを始める前に、姉は銀行で150万円を下ろしていました。といっても葬儀費用は50万円ほどで済んでいます」(佳代さん)

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事件が起きたのは、その後の遺産分割協議だ。

「話し合いで、姉が実家、私が預貯金をもらうと決まりました。それでハンコをついたのですが、姉が下ろした150万円は払われていません」

その後も佳代さんはおカネを請求したものの、「手元にない」とはぐらかされるばかりだ。

では、佳代さんはどうすればよかったのか。

切り札は実印だ。長女が家を自分のものにするには、次女に遺産分割協議書へ実印を押してもらう必要がある。

これを逆手にとり、長女が下ろした預金を渡してもらわない限り、実印を押さないと主張すればいい。簡単に実印をついてはいけないのだ。

 

生命保険についても、「早いもん勝ち」に対抗する方法がある。

保険金は受取人に指定されている人だけが受け取れる。そこで、老親に頼んで自分が受取人になっておくのが原則だ。

だが、保険証券が他の家族の手元にあり、受取人変更が難しいケースもある。

そんなときには秘策がある。老親に頼んで、遺言書に受取人を変更するという内容を書いてもらえば、死後に受取人を変えられる。

遺言書には「生命保険金の受取人を〇〇に変更する」と書き、保険証券番号、契約日、保険期間、保険金額、契約者、被保険者を記載する。

老親が亡くなったら、保険会社に遺言書を持ち込んで請求をする。ここでも、他の相続人より早く保険会社での手続きをする必要がある。

法改正で生じた「抜け穴」を封じるワザは、ページ末の表にまとめた。「早いもん勝ち」に対抗するには、こちらも早く、それこそ今から動くのだ。