遺産が親族に「早いもん勝ち」で奪われる時代の傾向と対策

争続に負けないための「8つの方法」
週刊現代 プロフィール

父親が亡くなり、母親の和子さんと、一郎さん、次郎さんの兄弟で相続するケースを考える。財産は1500万円の実家と預金500万円、一郎さんは実家で老親と同居しており、父親は「一郎に家を相続させる」という遺言書を残していた。

だが、次郎さんが家の所有権の一部を勝手に名義変更し、売却するのを法的には止められない。

家の所有権の一部だけを売っても意味がないと思う人もいるだろう。だが、十分に意味を持つ。

「共有状態にある難しい不動産の権利を買い取り、現金化する業者があります。こうした業者は、一郎さんと和子さんに所有権を高く売るか、一郎さんと和子さんの所有権を安く買い、家を丸ごと手に入れようとするのです」(弁護士・澤田有紀氏)

最悪、業者から裁判所に、共有物分割訴訟を起こされる。「家を競売にかけて、代金で分ける」という判決が出れば、一郎さんと和子さんは、家を失ってしまうのだ。

 

登記の予約をする

では、一郎さん、つまり実家を相続する人はどう対抗すればいいのか。

「次郎さんより一刻も早く、一郎さんが登記を済ませることです。一郎さんが登記をするには『家を長男に相続させる』という遺言書が必要です」(司法書士・内藤卓氏)

父親と同居していた一郎さんは、次郎さんより先に父の死を知る。だが、残されていたのが自筆の遺言書なら、家庭裁判所で遺言書の形式を確認する手続き(検認)をする際に次男に通知が行く。先に次男に登記されれば一巻の終わりだ。

だからこそ検認不要で、すぐ名義変更できる公正証書遺言を用意したい。

他の家族が、勝手に登記をしてしまうなんてことはないだろうと、油断する人もいるだろう。

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それは甘いと、前出の澤田氏は警鐘を鳴らす。

「次郎さんが自分で登記をしなくても、次郎さんが借金を滞納していれば、消費者金融(債権者)に家の権利を差し押さえられます。消費者金融は、代わりに登記(代位登記)をし、実家の権利を競売にかけるのです」

家の権利を代位登記されても、親族には一切連絡がない。突然、見ず知らずの業者から「あなたの家の所有権の一部を、競売で取得しました」という連絡が来るのだ。

もし、借金をしている親族、家族がいるなら、やっておきたいのが登記の予約(仮登記)だ。

父親に「私が死んだら、自宅の土地・建物を長男に贈与する」という契約書をつくってもらう(死因贈与契約)。この契約書を持って法務局で仮登記の申請をする。これで、代位登記を防げる。