市原悦子さん、渥美清さん…美しく逝くために著名人が備えていたこと

死に方は、生き方でもある
週刊現代 プロフィール

国民的女優の樹木葬

今年1月に心不全で亡くなった、女優・市原悦子さん(享年82)。市原さんが最も大切にしていたのが、自分がいなくなった後のお墓についてだった。

'14年に、市原さんは50年以上連れ添った夫である演出家の塩見哲さん(享年80)を亡くした。市原さんと60年来の友人であり、大河ドラマ『いだてん』で金栗四三の祖母役を演じた、女優の大方斐紗子さん(80歳)が振り返る。

 

「私は俳優座の養成所で、えっちゃん(市原さんの愛称)の4期下の後輩でした。俳優座でスタッフだった塩見さんはえっちゃんと同期です。

いつもボロボロのジーンズをはいていたんですが、それが妙に似合う格好いい方でした。本当に仲の良いご夫婦でしたね。塩見さんを亡くしてから、えっちゃんはそんな素振りはまったく見せないんですが、内心は悲しさに打ちひしがれていたと思います」

最愛の人を亡くした市原さんが自分にできることはないかと考えたのが、お墓のことだった。市原さんは生前から「お墓は人生を物語る証」と語っていたという。

「えっちゃんが亡くなる少し前にお仕事でご一緒した時に『私、いま樹木葬ができる墓地を必死で探しているの。でも、いいところがなかなかないのよ』とおっしゃっていました」(大方さん)

樹木葬とは、墓石の代わりに樹木を墓標として用いて、遺骨をその樹木の根元に納骨する埋葬方法のこと。市原さんは関東近郊の墓地、霊園を巡り歩いた。そうして千葉県袖ケ浦市にある霊園に決めたという。

「樹木葬はご主人のためにという思いだったのでしょう。より良い環境で眠らせてあげたいという気持ちだったのだと思います」(大方さん)

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そこで市原さんは並んだ2本の樹木を購入した。一方は塩見さん、もう一方には自分が入るためだ。そうして今年3月、彼女の遺骨もそこに納められた。

樹木葬は基本的に墓を継承しない、一代限りのものだ。費用も安く、残された人たちの負担が軽いという利点もある。二人の間に子どもはいなかったので、残される縁戚たちへの配慮もあったのだろう。大方さんが話す。

「えっちゃんの姿を見て、私も樹木葬を考えています。彼女と出会えて私も本当に幸せでした」

彼女たちはでき得る限りの支度をきちんと行っていた。だからこそ、周囲から愛され、きれいに消えていくことができたのだ。