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ドイツの「エネルギー転換政策」がノルウェーの大自然を絶賛破壊中

なぜこんなことがまかり通るのか

アウトーバーンの風景

有名なドイツの高速道路「アウトーバーン」の元は、「帝国アウトーバーン」だ。1933年に政権を掌握したヒトラーが即座に取り組んだプロジェクトで、ドイツ全土に全長7000kmの高速道路網の建設が計画された。

当時のドイツは、ヴェルサイユ条約の巨額の賠償金のせいで不景気のどん底にあり、膨大な失業者を抱えていた。つまり、「アウトーバーン」計画は、そのドイツ経済を立て直すためにヒトラーが考え出した財政出動の一環でもあった。

さらにヒトラーは、その翌年には「フォルクスワーゲン計画」にも着手する。「国民が休みの日には自動車に乗って遠足できる生活を」というスローガンは、生活苦の只中にいた国民を魅了した。フォルクスワーゲンは、フォルク(=国民)のワーゲン(=車)、アウトーバーンは、アウトー(=自動車)のバーン(=道路)だ。

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アウトーバーンの最初の区間は1935年に開通した。国民車の方が普及するのは、戦後、ヒトラーがいなくなってからのことだ。

現在のアウトーバーンは全長1万3009km。日本では、アウトーバーンには制限速度がまったくないと思っている人も多いようだが、部分的に制限速度はある。ただ、その、時速120kmとか、100kmとか、80kmとかという制限が外れる標識が見えた瞬間、皆がアクセルを踏み込む。そうなると、時速120kmぐらいで走っていれば、スイスイ抜かされる。

前置きが長くなったが、私の書きたいのはアウトーバーンについてではなく、最近、アウトーバーンを走っているとよく目につく、ソーラーパネルと風力タービンのことだ。

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アウトーバーンは必ず、住宅地とは離れたところを通っているので、横はたいてい森か、農地か、空き地だ。その空き地にソーラーパネルを敷きつめると確実にお金になるから、どんどん増える。また、そこらへんに勝手に立てることのできない風力タービンも、アウトーバーン脇のうるさくて使えない土地なら問題がないので、こちらも急激に増えた。

 

天を衝くような巨大な風車が、ぐるぐる音もなく(本当は音はある)回っている風景は気味が悪い。タービンの回り方がゆっくりに見えるからか、間違っても躍動的には見えない。とても無機質で、人類が死に絶えたあとの風景はこういう感じではないかと思う。

断っておくが、この連想は私だけのものではなく、他にもそう表現する人は結構多い。

シュトゥットガルトからライプツィヒは、アウトーバーンを飛ばしても、途中で一度休憩したりしていると5時間ぐらいかかる。その途中の、何もない荒涼とした風景の中、右も左も地平線まで、見渡す限りただ風車だけが目に飛び込んでくる場所がある。1シーンで50本ぐらいは見える。

初めてそこを通ったとき、その光景に呆然とした。本来、ドイツ人は景観を非常に大切にする人たちで、都市設計などもとても上手だ。美しく合理的なだけでなく、そこには、自然に対する愛情や哲学まで感じられる。

だから、バルト海や北海の洋上風力パークも、ドイツだけは、デンマークやイギリスとは違って、岸から見えない遠いところに建てたのだ。なのに、なぜこの醜い風車群は平気なのか? 理解に苦しんだ。

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