「醜いマウンティング」は何故なくならないのか? ある社会学者の考え

サムナーの「社会学」を読む
佐藤 優 プロフィール

知識、合理的方法、技術などによって、戦争のような自然作用の影響を免れることは、理論的には可能であるが、実際には難しいというのがサムナーの結論だ。論壇では、徴兵制を導入した方が戦争の抑制になるというような主張をする人がいるが、こういう人も、腹の中ではサムナーのように戦争は不可避と考えているのだと思う。

 

日本の国策に戦争を含めるべきと考える人は、意識的もしくは無意識のうちに戦争になれば日本人は勝利し、生き残るという適者生存の思想を持っているのだと思う。こういう根拠のない自己過信が国民を破滅に誘う。

サムナーは、人種主義的偏見を強く持っている。

〈われわれは、比較的低い人種を文明化するなどと話すが、それはまだ実現してはいない。われわれは彼らを根絶やしにしてきた。われわれが彼らを文明化するために用いてきたさまざまな工夫は、われわれの火器と同様、彼らにとっては災難のもとであった。

二〇世紀の初めに至って、偉大な文明国は、互いに極端に妬みあいながら、地球のはてまでも強奪しようとあせっている。互いに競いあって、他国の襲撃から自分たちの割り前を護ってくれる海軍を作っている。どうなるであろうか。

戦争の準備をしているからには、やがて間違いなく戦争を起こすだろう。こうして人類は文明化されてゆくであろう〉

21世紀では世界的規模で不安感が拡大している。適者生存原理が新自由主義的な経済原理から、戦争による国策遂行という方向に拡大することの危険性を認識する必要がある。

『週刊現代』2019年9月7日号より