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私が「人生のサバイバル力」を沖縄の高校生に伝えたかった理由

米中対立最前線の島で、佐藤優が語る
佐藤 優 プロフィール

ただし、わが家にも妖怪がいると母は言った。それは「ウーさん」と言って、風呂場の下に住んでいるということだった。ウーさんは、私専属の妖怪で、私が悪いことをすると叱り、困った状況になると助けてくれるという。

私は小学校低学年の頃まで、いたずらをしたり、うそをついたりするとウーさんに叱られるのではないかと恐れた。同時に、扁桃腺を腫らし、40度を超える熱を出したときにウーさんが現れて私を助けてくれた記憶がある。

 

沖縄的霊性は現代人に必須の素養

今になって考えると、母は沖縄的霊性を持っていた。沖縄人にとっての異界であるニライカナイは、極楽や天国とは異なる。ニライカナイから幸福も災厄もやってくる。絶対に善いものもなければ、絶対に悪いものもなく、善い人が悪い人になることもあれば、悪い人が善い人になることもあるという両義性を母はウーさんという私専属の妖怪を創り出すことによって伝えたのだ。

このような形態で沖縄人の霊性は私にも伝えられているのである。

物事の両義性が皮膚感覚でわかるという子どもの頃に叩き込まれた沖縄的霊性は、後に私が外交官になり、ソ連崩壊を経験したとき、鈴木宗男事件に連座し、東京地方検察庁特別捜査部に逮捕され、512日間、東京拘置所のかび臭い独房に勾留されたときにとても役立った。

この沖縄的霊性は、普遍的言語に言い換えるならば、複眼的視座ということになるのであろう。特にインターネット時代、恣意的な検索をしていると、無自覚のうちに偏った情報空間で生きることになってしまう。

物事については複数の見方があるので、自分が絶対に正しいと思うことがあっても、他の人にとってはそうでないという見方ができるようになることでサバイバル力が強化されるのである。

米中の新帝国主義が激突する東アジア

国際情勢の要因に関しても久米島には重要な意味がある。

国際政治の歴史を見ると振り子のような運動を繰り返していることがわかる。理想主義と現実主義、国際協調主義(インターナショナリズム)と国家主義(ナショナリズム)の間で振り子が振動する。現在、この振り子は、現実主義と国家主義の方向にかなり振れている。特に東アジアにおいては、米中が激しい覇権争いを始めている。

アメリカも中国も、行動様式は帝国主義的だ。帝国主義国は、相手国の立場を考えず、自国の利益を最大限に要求する。この要求に相手国が怯み、国際社会も沈黙していると帝国主義国は権益を拡大する。相手国が必死になって抵抗し、国際社会が「いくらなんでも、これはやりすぎだ」という反応を示すと、帝国主義国は譲歩する。

しかし、帝国主義国は自己の行動を反省することはない。これ以上、横車を押すと相手国と国際社会の反発によって自分が損をすると冷徹に計算した上で、一歩、退却するにすぎない。そして、自国の権益を拡大する機会を虎視眈々と狙う。