20年間住んだパリから日本に帰国しているエッセイストの吉村葉子さん。37万部を超えた『お金がなくても平気なフランス人、お金があっても不安な日本人』は、長くパリに住み、そして長く日本にも住んでいるからこその「生きるヒント」が散りばめられているエッセイだ。

そこからオンラインで初めてご紹介するエッセイの第11回は、「ケチ」と言われるフランス人の「おもてなし」について。三ツ星レストランではなく、そのおもてなしをうけたか否かで信頼されているかどうかわかるというその内容は。

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フランスでも実家暮らしが増えてきたけれど

かつて読んだフランスの本の中に、こんなひとくさりがあって笑えた。終始一貫してべらんめえ口調。時にどぎつい表現が売りの人気エッセー集にこうあった。

「近頃の若者は勘ちがいしている。オレたちが若いころはだれもが、早く親元を離れたくてウズウズしていたものだ。ところが今の奴らときたら、いつまでたっても親の家を出ようとしない。親の家にいれば冷蔵庫にはいつも牛乳が入っているし、家賃もタダだ。おまけにテレビも観放題。ところがただ一つ、奴らの最大の誤算は、親の家には親がいるということさ」

親離れが遅くなっているのは、どうもわが国の話だけではないようだ。親離れと子離れは対のようなものだから、子供が親に甘えているとばかりはいえない。親たちが豊かなのだから、子供にばかり清貧に甘んじろというのはむずかしい。

確かにフランスでも、いつまでも親の家に居座る若者がふえている。だが、親の世代には皆無だったことが、少しずつふえているだけのこと。両親がパリ市内や通学可能な郊外に住んでいたとしても、大学生のほとんどが自宅を出て一人暮らしをしている。成人に達したら家を出る。これが今でもフランスの常識だ。

家族で暮らせるのは子供が小さいうちくらいなのかもしれない Photo by iStock