教育ジャーナリストのおおたとしまささんが上梓した『21世紀の「男の子」の親たちへ』(祥伝社)。これは麻布・栄光学園・海城・開成・芝・修道・巣鴨・東大寺・桐朋・灘・武蔵といった名門男子校の教師総勢17人に聞いてきた様々な切り口の話をテーマ別にまとめて分析したものだ。

ジェンダー、AI、グロバールなど「今の時代」にアップデートされた子育てのヒントが凝縮されている。その本書から抜粋掲載してご紹介する第1回では、反抗期のないおそろしさをお伝えした。第2回では指示し、されることが当たり前となっている「カーリング親子」への懸念をお伝えする。

第1回 「開成・灘ら名門男子校教師の提言『くそばばあ」と言われたらこう答えよ」 はこちら

経験泥棒をしてはいけない

「これからは正解のない時代。そんな時代に生きていかなければいけない子供たちに、いま、どんな教育をすることが正解でしょうか?」という、冗談のようなことがいま、国を挙げてまじめに議論されています。

「これが正解だ」というものを与えられ、それに適応するための教育を受けてきた世代が、正解主義を脱ぎ捨てることができぬまま、正解のない時代の教育を語っているのです。滑稽極まりない。

人類は常に予測不能な未来に、その都度適応しながら生きてきました。もともと正解のない世界を生きる達人です。

なぜそんなことができたのか。人間は、事後的に「正解」をつくり出す能力に長けていたからです。状況が変わり、いままでうまくいっていたことがうまくいかなくなっても、やり方を変えてみて、試行錯誤して、最終的にはうまくいく方法を見つけ出す。要するに失敗から学ぶ能力に長けていたからです。

開成の葛西幸一先生は、「経験泥棒だけはしないでください」と保護者によく伝えるそうです。

失敗しそうだなと思っても、取り返しがつかないことでなければそのまま失敗させてくださいと。失敗が経験になるわけですから。命に関わること、後遺症が残るようなこと以外は」

でも実際には難しい。

「『朝、起こさないでください』と言っているんですが、起こしますよね。『なんで起こしてくれないんだよ』と言わせて、『あなたが悪いんでしょ』と言うのが大事なんですけど」

親としても、息子のなかに自分の居場所を残しておきたいのかもしれません。息子のなかに、自分がいなきゃダメな部分を残しておきたいというほとんど本能みたいな無意識があるのかもしれません。

部活に勉強に忙しい子どもを支えたいという親心もわかるが、それも含めて「経験」。どうしても起こしてほしいとお願いされたら声をかけるくらいにするなど、できるだけ「子ども自身にやらせる」必要があるのだろう。「起こしてもらえるから」と思わせてしまっても良いことはない Photo by iStock