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対中貿易戦争の背景にある、アメリカの強烈な「歴史的危機感」とは

グリーンランドにまで手を伸ばす「敵」

アメリカでは、大統領が一存で関税率を決めることができる。米中貿易戦争がかくも簡単に拡大してしまうのは、そのためだ。

こうした強い権限を大統領に与えているのは、アメリカが強い危機感を復活させたことの現れかもしれない。

先端分野での中国の躍進ぶりを見ると、アメリカが危機感を持つのは当然と言える。

 

米中貿易戦争が歯止めを失い始めた

8月23日にトランプ大統領が中国の報復関税に対して追加関税を発表したことによって、米中貿易戦争が拡大し、世界経済の混迷が深まった。

株式市場では株価が大きく下落。為替市場では、円高が進んだ。

こうした展開に対応するのに、各国の政策当局は難しい立場に置かれている。

まず中国。これまでの追加関税は、元安によってかなりの程度打ち消されている。今回の措置によっても元安が進行するだろうが、そうなると、中国からの資本逃避が増加する危険がある。元レートをいかなる水準にすべきかについて、中国政策当局は難しい選択を迫られている。

つぎにアメリカFRB(連邦準備理事会)。トランプ大統領は、FRBに強い緩和圧力をかけている。金融市場はすでに利下げを織り込んでしまっているので、9月の利下げは不可避だろう。 

ただし、それによって現在の状況を改善できるわけではない。パウエル議長が「政策対応の見本になる先例がない」と言っているとおりだ。

日本の政策当局も困難な立場にある。

アメリカの利下げと投資家のリスクオフ行動という2つの要因によって、円高が進むことは避けられない。これにより、輸出産業や外国人旅行者に依存していた産業が大きな打撃を受ける。それだけでなく、企業の減益が全般的に進むだろう。

ところが、そうした動きに対して、日本の政策当局は有効な政策手段をもっていない。「追加緩和」というが、国債購入を増やせるわけではない。考えられるのはマイナス金利を強化することだが、そうなれば、金融機関の採算はさらに悪化するだろう。

この問題と消費税増税とは別のことだが、状況次第では、「景気が悪化するから消費税増税は再延期」という短絡的主張が力を増すことがありうる。