品格を疑う…中国人留学生の「反香港・愛国」パフォーマンスが激化中

フェラーリに中国国旗を取り付けて
古畑 康雄 プロフィール

自国でデモができない理由

このような過激な「愛国」行動を見て常に思うのは、ではなぜ彼らは日本や欧州、オーストラリアではなく、北京や上海など自国でやらないのか、ということだ。2000年代から2012年にかけて、中国で何度も反日デモが繰り返され、日本の大使館や商店が破壊や略奪にあったことは記憶に新しい。

実は8月18日に、北京で大規模な抗議活動が計画されていたのだという。ボイス・オブ・アメリカ(VOA)などの報道によると、香港で「反送中」デモが行われた18日に、北京の天安門広場で「国旗を守れ」という愛国デモが計画された。

ところが中国政府は支持をしなかったばかりか、この計画に関してネットを完全に封殺し、当日、天安門広場で大規模な警備を行い、「国旗を守る」いかなる愛国デモも認めなかったのだという。

 

これについて、カナダ在住の中国人作家で人権活動家の盛雪さんは、「不思議ではない」と次のように指摘した。

「中国の全体主義の政治体制は、あらゆる個人による意見表明を危険だと考えている。今の政権は特に強硬だ。たとえこの政府への支持を表明しても、潜在的な脅威とみなされてしまう。なぜなら人々が意見を公にしたり、人々が集まったりするだけで、一種の圧力とみなすからだ。意見表明に慣れた結果、突然政府への不満を言い出すのではないかと恐れている。それゆえ、たとえ中国の民衆が政府への支持を表明したくても、中国共産党が支配するこの状況では不可能なのだ。」

別の人権派弁護士も、2012年の反日デモを政府は当初認めたが、中国人の車の破壊や暴行事件、さらに政府への不満の声が起きたことで、当局は慌ててブレーキを掛けた、今回中国政府が香港問題で国内での愛国デモを認めないのも、こうした事件から得た教訓なのだと指摘した。

つまり中国政府は香港の抗議デモに対して、中国の民衆に国内で愛国デモを行わせようとはせず、海外の留学生や華人ら愛国者の力を利用しており、これを最近では「離岸(オフショア)愛国主義」と呼んでいると報じている。

以前本コラムでも紹介した中国の国営放送記者がイギリスで騒いだのもその一種だろう。

筆者の知り合いにも最近フェイスブックで「香港独立派や台湾独立派とは友人から削除する」と書き込んだ中国人女性がいたが、会った時は非常に穏やかな人なのになぜこんなことを書いだのだろうと不思議に感じた。

海外に暮らす中国人がなぜより愛国的になるのかについては、多くの評論が出ており、筆者も学者らにインタビューしたことがある。いずれ機会を見て紹介したい。

いずれにせよ、「自分の庭では騒いでほしくないが、他人の庭ならば騒いでも構わない」というのは、あまりにもご都合主義ではないだろうか。特に、今回の一連の香港の問題に対して、中国の外務省などは西側からの批判を「中国の国内問題であり、内政干渉するな」と批判している。

だったらなぜ他国の主要都市で中国国旗を振り回したり、はてまたスーパーカーを派手に乗り回したりして、他国の市民生活に影響するようなことをするのだろうか。

香港のデモに対する支持・不支持は別として、自国の問題は他国に持ち込まないでほしいというのが、日本を含め多くの海外の市民の受け止め方だろう。政府の主張を支持する人々に、正々堂々と自国でのデモを認めず、海外でやらせているのは、前回にも指摘した「自信のなさ」の現れと言われても仕方ないだろう。

以前も紹介した筆者の友人で、中国出身の作家、和気猫さんも微信で日本での中国人によるデモについて紹介している。彼女に意見を聞くと、次のように答えてくれた。

「暴力さえなければ、日本でもカナダでも、合法性で言えば、デモの権利は、外国人にも認められるでしょう。ただ、中国人留学生たちが叫んでいる内容は、香港デモ参加者への侮辱であることは看過できないことだと思います。秩序維持のために見守っていた日本の警察官には、その言葉の意味が分からないのは仕方ないですが、後でこれは非常に汚い侮辱の言葉だと判明すれば、今後同様なデモの予定の届け出を受ける際、同様なことが無いように事前に確認しておく必要があると思います。日本の警察官が侮辱罪に該当する行為について容認、加担するのは許されないと思います。」