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日本のITにいまひとつ“覇気”が感じられない「シンプルな理由」

なぜ日本人は夢や理想を語らないのか

日本のIT(情報技術)はいまひとつ、世界で「覇気」がないように見える。その理由が最近、少し分かった気がする。それは「こういう世の中にしたいという理想」を持ってないからではないか、というものだ(なおここで「覇気」とは何かの定義が必要だが、ここでは「技術イノベーションの熱意と『ドヤ顔』」くらいに捉えておく)。

アメリカに比べて日本では、ITはビジネスの品揃えの一つに過ぎず、ITの夢や理想はほとんど語られないままに、求められた条件の経営や効率を考えているように感じる。しかし経営や効率は企業活動の方法の一部であり、その動機ではないはずだ。与えられた条件での最適化ではイノベーションは生まれない。それなら今後、日本社会はどうすればよいのだろうか。

ティム・バーナーズ=リー/Photo by gettyimages

WWW (World Wide Web)を発明したのは、ジュネーブにある物理学の研究所CERN(欧州共同素粒子物理学研究所)の科学者、ティム・バーナーズ=リーである。その最初の提案は1989年3月。このとき筆者は同研究所のポスドク研究員だった。

この発明の背景には、オープンマインドな物理学者が大勢参加する国際共同研究において、グラフやデータを世界規模で共有したいという強いニーズがあった。やる気さえあれば、技術の問題は技術で解決できることが多い。仮にそこに汎用性があり、小規模から大規模までスケールでき、誰でも便利に使える技術であれば、それは技術イノベーションとなり、やがて制度イノベーションを通して、社会イノベーションを引き起こす。そのようなWWWが誕生してから30年、それが今年2019年である。

 

この間、筆者は日本の大学教育の視点から「情報」について考える機会が多くあった。その中で日本のITの何が問題なのか、少し分かったような気がしている。そこで本稿では、日本のITの問題点と今後の解決策について、大学教育の課題や人材養成の課題も含めつつ、改めて考えてみたい。