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芸術が抗議に屈するとき…あいトリで露呈した「政治的不寛容」の正体

私たちも「タブー」を排除している

「マック・ジーザス」問題

「美術館は、宗教的もしくは政治的圧力に屈することはない」
「私たちは、発言の自由、芸術の自由、文化の自由を擁護し続ける。そしてそれらを壊すつもりもない」

あいちトリエンナーレの芸術監督、津田大介氏の言葉ではない。

今年1月、イスラエル北部にあるハイファ美術館のニッシム・タル館長が、当時同美術館で開催されていた消費品の聖化に捧げる展覧会「Sacred Goods(聖品)」の一環として設置された展示物に対しての抗議活動が起こった際に発したものである。

仏紙「ラ・フィガロ」によれば、問題の発端は「マック・ジーザス」と題された十字架に張り付けられたドナルド・マクドナルドの彫像だ。

他にも血まみれのイエス・キリストと聖母マリアを模したバービー人形などがあり、これらが「芸術的抗議行動としての提示が宗教の神聖なシンボルを軽視している」としてアラブ人キリスト教徒による抗議運動を引き起こし、デモが行われるに至った。

美術館前の標識には旗が掲げられ落書きもされた〔PHOTO〕iStock

博物館側は「マック・ジーザス」は「多国籍企業による宗教的シンボルのシニカルな使用」を表現したものと回答、「展示会はあくまで社会が狂信的に崇拝する資本主義に対する批判を主旨とするものであり、撤回はあり得ない」との態度を表明し、教徒側との話し合いの上、作品の前に注意書きを設置する等の対処を行った。

しかし、暴徒により火炎瓶が美術館へ投げ込まれ、投石によって3名の警官が負傷。イスラエル警察当局が催涙ガスやスタン弾を用い、群衆を追い散らすなど騒動は拡大した。

 

この事態にイスラエルのミリ・レジェブ文化スポーツ大臣は作品の撤去を要請する書簡を美術館側に送り「芸術的な抗議行動の手段として神聖な宗教シンボルを軽んじることは違法であり、そのような作品を公共の文化施設に展示することはできない」と表明。芸術への検閲として非難されることとなる。

一連の事態に対し「屈しない」としていた美術館側だが、程なく撤去することを決断した。