図書館司書は「いらない仕事」?非正規・低賃金労働とパワハラの実態

「シャネルを着た司書」を諦めない
寺下 由美子 プロフィール

人がどんどん辞めていく

司書たちは全員で集まって、面談で会社に何を言われたのか確認し合った。すると、人によって説明内容が全然違うし、特定の人が精神的に圧力をかけられているのもわかった。

全員で異動を拒否し、個人面談も拒否した。密室では圧力をかけられるから、営業には全員の前で話をしてもらった。

 

司書たちは、今すぐ労働契約書を渡さないなら全員即刻出て行くぞと営業に凄んだ。もし本当に司書が全員出て行けば、図書館はしばらく閉館するしかない。それは大問題になる。

「司書に全員辞められたら、ウチはもう図書館業界で仕事ができなくなる」
「学生のためと思って残ってほしい。私を助けると思って」

営業は、この時初めて謝罪した。異動の話も撤回、労働契約書もすぐに持ってきた。3月30日だった。

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会社から「司書が全員辞めそうだ」と聞いて、慌てて図書館課長と館長を務める大学教員が司書に謝罪した。課長は今回の予算削減の経緯を説明して、最後にこう言った。

「司書は予算削減のスケープゴートなんだよ」
「学生のためにグッと踏ん張ってほしい」

その言葉に司書たちは絶句した。重苦しい沈黙の中、1人の司書が言った。

「私たち司書は、給料も低くて労働条件も最悪です。でも自分の利害なんて関係なく学生、教員、職員のために仕事をしてきました」

課長と教員は辛そうな表情で深々と頭を下げた。それでも司書たちの表情は暗かった。

結局、その後間も無く、司書たちは全員転職先を見つけて、図書館を去った。会社はまた強引な方法で他の大学から後任の司書を連れてきたが、その人も半年で退職した。求人では全く人が集まらず、司書資格も図書館経験もない人が来ては数日で辞めていく。

かつて優しい司書たちが迎えてくれた明るい図書館は、もう存在しない。図書館のカウンターは無人化された。机には小さなベルがぽつんとあるだけ。ベルの前では、質問に来た学生が戸惑った表情で立っていた。