一方で、女性の社会進出と対をなすように、台所進出する男性たちも少しずつ増えていった。1977年に「男子厨房に入ろう会」が組織されるなど、性別役割分担意識から自由になろうと努力する男性たちが出てきたのである。

平成になると、家庭科の男女共修も進み、男性が料理するテレビ番組やCMが多くなる。ケンタロウやコウケンテツといった、二世三世の男性料理研究家たちが、活躍するようになったこともあり、男性たちの心の障壁は少しずつ取り払われていく。

料理するようになったのは、現役世代の男性だけではない。平成になった頃には、NHKの「ひとりでできるもん!」という子ども料理の番組も登場。子どもに料理を教える、料理をさせる機運も高まる。それは昭和後半に子どもたちに料理を教える親が少なくなっていた反動でもあった。

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また、『きょうの料理』では、シニア世代に向けた料理の紹介もしており、料理の担い手は多様化が前提となる。

平成の半ば頃になると、レシピ本が対象とする読者層も多様化していく。仕事で忙しいシングルでも手軽にできる料理を紹介する『終電ごはん』(梅津有希子・高谷亜由、幻冬舎)、初心者のための『きょうの料理ビギナーズ』、男性がつくる『男子ごはん』といったレシピ本やテレビ番組が登場する。

家にいつでも主婦がいて、家族のために働いてくれる前提がなくなった平成時代、誰もが料理できたほうがいいという時代が到来した。

外食や中食という選択肢も増えた。「妻がつくるのが当たり前」というプレッシャーがなくなりはじめ、女性と男性は自由になってきたとも言える。

料理する、あるいは食べるものを買う。その選択を自分で行い口に入るものを自分で選ぶ。それはもしかすると、男女が精神的に自立する環境が、ようやく整い始めたということかもしれない。

あとは、「ちゃんと日替わりでていねいな料理をするべき」と思い込む女性や、「料理は妻の役割」と思い込む男性の、心の障壁をいかに取り払っていくかがこれからの課題と言えるだろう。