「主婦」になるということ

昭和と平成――それぞれの食卓を比較し、時代がどのように変わったのかをあぶり出してみたい。ここで言う昭和は、戦争が終わって世の中が落ち着いてきた高度成長期以降である。

変化の要因の一つは、食卓を支えてきた女性たちのライフスタイルが変わったことである。昭和は主婦、平成は働く女性が多数派になっている。その違いが、食卓にどのような違いをもたらしたのかをみていこう。

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昭和半ばの高度経済成長は、社会の構造を大きく変えた。農業などの第一次産業で働く人は激減し、急成長した第二次産業などへ吸収されていった。その結果、1960年以降は、会社などに勤める人が労働者全体の半分以上を占めると多数派になる。

この頃の企業は、女性を補助的な存在と見なしていたため、結婚退職制度を設けるなど、女性が長く働きにくい環境にしていた。

一方、男性には家族を養う前提で高い給料を支払っており、会社勤めをしていた人たちは、男性が一家の大黒柱として稼ぎ、女性が家事や育児を引き受けて家庭に納まる、性別役割分業へと誘導されていった。

女性たちが主婦になったのは、必ずしも企業が仕事しづらい環境だったからだけではない。彼女たちにとって、主婦になることは底辺労働者からの脱出であり、生活レベルの向上を意味したからでもあった。

それまでの時代、一握りの豊かな階層を除いて、女性たちは結婚しようが子どもがいようが働くことが当たり前だった。夫婦で働かなければ、家計を維持することができなかったからである。

また、今でもそうだが、多数派だった農家や商家などの家業がある場合は、妻たちも労働力としてアテにされていた。主婦になることは、そういう労働から解放されることを意味した。