──MatrixFlowについて簡単に教えてください。
MatrixFlowは、データ分析・機械学習の知識がなくても精度の高いAIを構築できるサービスです。一般的に使われている数多くのAIアルゴリズムやそれに付随するパラメータを自動で試行し、最適なアルゴリズムとパラメータの組み合わせを探索します。
プログラミングではなくマウス操作で作ることができるUIになっているので、機械学習の専門知識が“まったくない”開発者でも、簡単にコストを掛けず最適なアルゴリズムとパラメータの組み合わせを探索することができるようになっています。
AIを導入するためには、数学やプログラミングの知識だけでなく、業界や事業についての知識や知見も必要とされています。ドメイン知識を多く持っているビジネスサイドの人にMatrixFlowを使ってもらうことで、よりダイレクトに課題を解決してほしいと思っています。
将来的にはマーケットプレイスを作りたいと思っています。既存の会社が作っているものは、それぞれ似たようなアルゴリズムを使った、似たようなソリューションなのに、各会社がそれぞれ別々に出している。つまり、「車輪の再発明」が起こっているのです。
僕はそれがすごく無駄だと思っています。MatrixFlowのブロックとして出してほしい。アルゴリズムがプラットフォーム上にたくさん存在してやりとりできるような、AIのApp Storeと呼べるような世界を実現したいと思っています。
──会社を立ち上げたきっかけを教えていただけますか?
数年前くらいから、Googleが「AIの民主化」というのを謳いだして、その「民主化」というワードに強く共感したんです。
その人が持つ属性や、その人が生まれ育った環境によって人生が大きく制限されてしまうことってあるじゃないですか。昔からそういった「機会の不平等」が嫌いだったんです。そんな「機会の不平等」を打破してきたのは常に「テクノロジー」だった。
昔は貧しい人は教育を受けられず、情報は一部の人たちに独占されてきました。しかし、インターネットが出現したことにより、権力の源泉であった情報独占が崩れ、誰にでも情報が行き渡るようになった。
たとえば、昔は自分の考えを発信したいときはテレビに出なければならなかったのですが、今ならSNSやYouTubeでだれでも発信することができます。それと同じように、誰でもAIが使えるようになるツールを作れば、環境要因で制限されている人たちの可能性が開けると思いました。
一方で、よくよく考えてみると、「民主化」とは言いつつも、AIを使えているのはエンジニアしかいません。「これは本当に民主化なのか?」というのが疑問でした。