私は行政書士をしながら男女問題研究家として活動しており、これまで何千件という離婚などの男女トラブルの相談を受けてきます。
現在は3組に1組が別れる大離婚時代。特に熟年離婚が増えています。
とはいえ、いざ離婚をすると決意をしてもそう簡単にはいきません。実際に離婚するまでには夫婦間でさまざまないざこざが生じて、その間に途方もないバトルに発展することも少なくありません。
原口孝雄さん(仮名。65歳。当初は会社員)も妻と離婚したくてもできない一人です。
そもそも原口さんの妻(63歳)は、孝雄さんが少しでも文句を言おうものなら「もう、あんたの面倒はみない!離婚よ!」と逆上するほど気性が荒い性格の持ち主。原口さんは結婚から40年間、ずっとそのことに悩まされており、いっそのこと本当に離婚したいと思ったことは一度や二度ではありませんでした。
そこへきて老後は子供たちも独立して、妻と二人きりの生活となるのはきついと思い、熟年離婚を考えていました。
しかし、そんな矢先、孝雄さんに不幸が襲ったのです。
「この年でオムツを履かせられるなんてね…」
自嘲気味に言いますが、孝雄さんは仕事中に倒れてしまったのです。何とか一命は取りとめたものの、多発性脳梗塞後遺症と診断され、両手、両足に麻痺が残ったため、移動は車椅子に。また食事や風呂など身の回りのことはすべて介助が必要となり、要介護度3と認定されたのです。
妻の助けなくして満足に暮らせなくなったわけですが、不幸なことに孝雄さんが自由にならなくなったのは「身体だけ」ではありませんでした。