# 相続

夫の遺産「6500万円」を親不孝息子から守った…その驚くべき裏ワザ

「特別受益」が役に立つ
江幡 吉昭 プロフィール

「特別受益」という裏ワザ

不本意ながら長男に内容証明を送付しても受け取ってもらえず、戻ってくる始末。このままでは遺産分割も出来ませんし、そもそも長男は冷静に話が出来る状態ではありません。

困り果てた佳枝さんは、夫の四十九日が過ぎた後、知り合いに紹介してもらった弁護士に、相続について相談したものの、弁護士の反応は予想を裏切るものでした。「とりあえず着手金として200万円をいただきます。さらに成功報酬として経済的利益の10%をいただきます」と、報酬に関する話ばかりをして、ほとんど相談については聞いてくれません。

弁護士費用の高さと、その不誠実な態度に不信感を抱いた佳枝さんが、セカンドオピニオンの一環として我々のところに相談に来られたのは、そんな経緯からでした。

 

そこから我々は長男と接触を試みましたが、らちがあきません。佳枝さんは最終手段として、我々が紹介する弁護士を通じて遺産分割協議を行うことにしたのです。

それから数ヶ月して、調停委員と双方の弁護士、そして佳枝さんと長男で話し合いの場が設定されることになりました。当初は体調不良を理由にまともに出席しないことが続いた長男も、少しずつ調停に直接参加するようになり、ようやく事態も動き出します。結局、結論が出たのがその1年半ほど経ったころでしたが、佳枝さんは自宅に住み続けることができることになりました。

いったいどんなカラクリがあったのでしょうか。ポイントは、調停委員の説得と弁護士との協議により、長年佳枝さんが支払っていたアパート代を「特別受益」とみなすことで合意が取れたことです。

「特別受益」とは、相続人が被相続人から生前に贈与を受けていたり、相続開始後に遺贈を受けていたり、特別に被相続人から利益を受けていること言います。今回のケースでは、大学退学後から東京で生活していた佳枝さん夫婦がこれまで支払っていた長男のアパート代月8.8万円の合計約2000万円弱となりました。

このような特別受益を受けた長男が相続人の中にいる場合に、法定相続分通りに相続分を計算すると、母や長女にとっては不公平な相続になります。このような不公平な特別受益がある場合、これを考慮した計算方法によって分配額が決められます。その結果、長男の相続分はなくなったわけです。

つまり法定相続分の1625万円はすでに特別受益で長男が受け取っているということで、佳枝さんはこれ以上の身銭を切ることがなく、この遺産分割協議を終了させることができたのです。

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