富豪慈善家の性犯罪と怪死…謎の「エプスタイン事件」世界に走る激震

MITメディアラボ・伊藤穣一氏も交流
平 和博 プロフィール

寄付金の「色」をどう考えるか?

エプスタイン被告は、自ら「科学の慈善家」と称していたという。ではアカデミズムの側は、性犯罪者登録をされているような人物からの寄付をどう考えるべきか。

今回の騒動では、特にエプスタイン被告への有罪判決が出された2008年以降の寄付や交友について、メディアの追及が目立つ。それ以前の時点では、同被告の性犯罪の実態を、外部から伺い知ることは困難なためだ。

 

ハーバード大学は返還の意思がないことを明らかにしている。一方でMITメディアラボは、同被告の寄付と同額を被害者団体に寄付するとしている。

ただ、受け取った寄付金の扱いをどうすべきか、という統一した基準も法的な義務も現状では存在しない——米サンタクララ大学応用倫理センター所長のジョーン・ハリントン氏はマイアミ・ヘラルドのインタビューに、そう答えている。「これは全くの倫理上の問題になる」と。

エプスタイン被告から2007年に250万ドルの寄付を受けていたオハイオ州立大学は、1990年の1,000ドルの寄付に至るまで、同被告関連の寄付のすべてを検証し直し、「適切な対応を取る」としている。ハリントン氏は、このような透明性の確保が、大学のレピュテーションと将来の寄付金への担保にもなる、と指摘する。

前例となるのが、性的暴行で2018年に禁固刑が言い渡されている米コメディアンのビル・コスビー被告と、やはり性的暴行で裁判が継続中の元映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン被告のケースだ。

南カリフォルニア大学は2017年10月、ワインスタイン被告の疑惑が明らかになった段階で、同被告の寄付500万ドルを返還した。寄付金は女性映画製作者の養成を目的としたものだった、という。またアトランタの女子大、スペルマン大学は2015年、コスビー夫妻からの2,000万ドルによって創設した教授職を廃止し、基金を妻の財団に返還した、という。

だがラトガース大学は2017年10月、フェミニズムとメディアの研究を目的としたワインスタイン被告の寄付10万ドルを「女性の平等の推進に活用する方が有効だ」として、返還はしないことを明らかにしている。

組織の使命と価値に照らして受け取った金をどう扱うべきかが重要、とハリントン氏は指摘する。「金の色」の問題をどう扱うか。それは、組織の在り方を問い直す契機にもなるようだ。