この騒動への反発の動きも出ている。メディアラボの准教授で同ラボ傘下のシビックメディアセンター所長、イーサン・ザッカーマン氏は同月20日、年度末をもって辞任する考えを明らかにした。
メディアラボでは2017年から「不服従賞」を主催。2018年の同賞は性的被害に対する抗議運動「#MeToo」のリーダーたちに贈られており、ザッカーマン氏は「悲惨な皮肉だ」とした。同センターの客員研究員のネイサン・マティアス氏も、やはり年度末で辞任するとしている。
アカデミズムの「人脈」
エプスタイン被告の資金の流入先は、同じボストン近郊のハーバード大学にも及んでいる。
エプスタイン被告はプレスリリースなどで、同大学の進化生物学の教授、マーティン・ノワク氏の進化ダイナミクス・プロジェクトの立ち上げを支援した、と表明している。プロジェクトの立ち上げは2003年、寄付額は650万ドル(約6億8,900万円)とされている。ハーバード大学は、寄付はすべて支出済みで返却の予定はない、としている。

これに加え、ゲノム解析の権威で、DNA配列による「マンモス復活」プロジェクトでも知られる、ハーバード大学教授、ジョージ・チャーチ氏も、科学メディア「スタット」のインタビュー記事(8月5日付)で、2005年から2007年にかけてエプスタイン被告からの寄付を受けた、として謝罪している。
チャーチ氏とノワク氏は遺伝子編集ツール「CRISPR(クリスパー)」による共同研究を進める関係で、エプスタイン被告との面会にも、多くの場合、ノワク氏が立ち会っていたという。チャーチ氏はスタットのインタビューで、エプスタイン被告との交友を続けたのは「視野狭窄だった」として、被害者への謝罪を述べている。
マイアミ・ヘラルドの調査報道によれば、エプスタイン被告が過去20年間に自らの三つの財団などを通じて政財界や大学などに提供した資金の総額は、3,000万ドル(約31億8,000万円)。ただ、残る一つの財団の支出はわからず、全体像は把握できていないとしている。