富豪慈善家の性犯罪と怪死…謎の「エプスタイン事件」世界に走る激震

MITメディアラボ・伊藤穣一氏も交流
平 和博 プロフィール

有罪判決から10年が経過した2018年11月、地元のマイアミ・ヘラルドが調査報道で改めてこの司法取引の疑惑を追及。この間に被害者らによる約20件の民事訴訟も起こされていた。

報道をきっかけに、トランプ大統領に批判的な共和党の有力上院議員、ベン・サッセ氏が解明要求の声を上げ、司法省が調査を開始。エプスタイン被告の再度の逮捕、起訴に至る。その結果、起訴から4日後の今年7月12日、アコスタ氏は労働長官の辞任を表明する。

だが、未成年への性的搾取の罪などで最大45年の刑期の可能性があったエプスタイン被告は、翌月の8月10日朝、収監先のニューヨークの拘置施設内で死亡しているのが発見された。自殺とみられている。

 

揺れるMIT

エプスタイン事件の影響は、政財界にとどまらない。アカデミズムの世界にもまた、事件の波紋が広がっている。

米東海岸の名門、マサチューセッツ工科大学(MIT)学長のラファエル・レイフ氏は8月22日、同大学がエプスタイン被告から、過去20年にわたり、約80万ドル(約8400万円)の寄付を受けていたことを明らかにした。

寄付金は、同大学の先端テクノロジーの研究所「メディアラボ」と、量子コンピューターの研究などで知られる機械工学部のセス・ロイド教授に配分されていたという。レイフ氏はこの寄付金が、MITの正規の手続きを経ていたにもかかわらず「判断に誤りがあった」とし、検証作業を行うとしている。

メディアラボ所長の伊藤穣一氏はこれに先立つ同月15日、エプスタイン被告からの資金受領と交友を認め、被害者らへの謝罪を表明していた。メディアラボへの寄付に加え、ベンチャー投資を行う伊藤氏の個人ファンドに資金を受けていたという。

伊藤氏は、エプスタイン被告をメディアラボに招いたり、同被告の複数の居宅を訪れたりしていたが、その犯罪行為については関知していなかった、としている。メディアラボへの寄付金と同額を被害者支援のNPOに寄付し、個人ファンドへの資金はエプスタイン被告側に返還する、と表明した。

MITメディアラボ所長の伊藤穣一氏(Photo by gettyimages)

ロイド氏も同月23日、ブログで被害者への謝罪を表明。2012年と2017年の2度、同被告の財団から寄付を受けていたとしている。

エプスタイン被告をめぐっては、メディアラボの創設メンバーの一人でもあるマーヴィン・ミンスキー氏(2016年に死去)の名前も取り沙汰される。ミンスキー氏はMIT人工知能研究所(現コンピューター科学・人工知能研究所[CASIL])の共同創設者であり、「AIの父」とも呼ばれる。

ネットメディア「ヴァージ」は8月9日、エプスタイン被告の被害者の法廷証言資料をもとに、この被害者が10代の時に、同被告のヴァージニア諸島の邸宅で性的行為を強要された相手として、英国のアンドルー王子や元米ニューメキシコ州知事、ビル・リチャードソン氏らとともに、ミンスキー氏の名前が挙げられている、と報じた。アンドルー王子とリチャードソン氏は、ともに関与を否定している。