ジェフリー・エプスタイン被告(Photo by gettyimages)

富豪慈善家の性犯罪と怪死…謎の「エプスタイン事件」世界に走る激震

MITメディアラボ・伊藤穣一氏も交流

10代の少女らへの性的虐待で逮捕され、裁判開始前に自殺した米富豪、ジェフリー・エプスタイン被告の事件の余波が、その死後も広がっている。数百人規模ともいわれる少女らへの深刻な性的虐待疑惑と、舞台となったフロリダやニューヨークなどの豪邸、トランプ大統領、クリントン元大統領、英国のアンドルー王子などのそうそうたる顔ぶれとの交友関係。そのコントラストが国際的な関心の的となってきた。

一方でその人脈はアカデミズムの著名研究者らにも広がり、マサチューセッツ工科大学(MIT)やハーバード大学といった名門校に豊富な資金が流れていたことも、メディアの注目を集める。性犯罪者と巨額の寄付。性犯罪被害の深刻さに加えて、寄付金の「金の色」の問題をめぐっても議論を呼んでいる。

 

「エプスタイン事件」とは何か?

エプスタイン被告は証券大手のベアー・スターンズを経て、投資や財務コンサルティングなどで財を成したといわれ、米下着大手「ヴィクトリアズ・シークレット」を傘下に持つエル・ブランズ創業者のレスリー・ウェクスナー氏も同被告の顧客とされる。

エプスタイン被告はニューヨーク・マンハッタン、フロリダのパームビーチ、ニューメキシコ、さらにパリやヴァージン諸島にも邸宅を所有。遺言書に記された財産の総額は5億7,767万ドル(約612億円)に上っていた。同被告が逮捕されたのは今年7月6日、自家用ジェットでパリから米ニュージャージーの空港に到着したタイミングだった。

人脈も幅広く、エプスタイン被告のアドレス帳には著名人の名前と連絡先が次々に登場するという。その一人、トランプ大統領は2002年のインタビューで、エプスタイン被告とは「15年来のつきあい」と語っていた。

また、クリントン元大統領は、複数回にわたってエプスタイン被告の自家用機に搭乗した記録が明らかになっている。さらに、英国のアンドルー王子は1990年代からの交流があるという。このほかに、イスラエルのエフード・バラク元首相の名前も挙がる。

エプスタイン被告の事件は、2001年ごろまでさかのぼる。パームビーチなどの邸宅にマッサージのアルバイトと称して10代の女子中高生らを招き入れ、1回200〜300ドル(約2万1000円〜3万2000円)ほどの報酬で性的行為に及んでいたという。さらに知り合いの紹介にも報酬を支払い、被害はねずみ算式に拡大。少女の勧誘は米国内にとどまらず、欧州や南米にも及んでいた、といわれる。

犯行現場のひとつとされる、エプスタイン被告が所有するリトルセントジェームズ島の別荘(Photo by gettyimages)

2005年に被害者少女の保護者が警察に相談して問題が発覚。エプスタイン被告は2008年、少女の売春勧誘、売春斡旋で有罪判決を受ける。

だが、当時の捜査で100人を超す被害少女が特定され、終身刑の可能性があったにもかかわらず、司法取引の結果は、13カ月の禁固刑。性犯罪者としての当局への登録は義務付けられたものの、収監先も監視の緩やかなパームビーチ郡の刑務所で、1日12時間、週6日は外出し、自らのオフィスに滞在することを許されていた。

エプスタイン被告にとって寛大なこの司法取引をまとめたフロリダ州の連邦検事が、トランプ政権で労働長官を務めたアレクサンダー・アコスタ氏だった。