乱射、放火…世界の「凶悪事件」の犯人は、なぜ「男性」ばかりなのか

そこには生物学的な理由がある

だが第二次世界大戦でアウシュビッツとヒロシマを体験した人類は、もはや国家間の総力戦を起こすことができなくなった(次の総力戦は「人類絶滅」だ)。こうして私たちは、人類の長大な進化の歴史のなかでありえないような「平和」な社会を生きることになった。

「生存への脅威」がなくなれば、もはや若い男の戦闘力を維持するために部族のなかで平等に性愛を分配する必要はない。こうして、「自由恋愛」の世界が到来した。

 

自由恋愛市場の残酷さ

自由恋愛では、原理的に、男女の性愛の非対称性が極端に顕在化する。「お見合い」や「紹介」などのかたちで共同体内でカップリングを行なう習慣が廃れたことで、「男の競争と女の選り好み」という戦略のちがいがよりはっきりと表われるようになったのだ。

競争がはげしくなれば、そこから脱落する男が増えていくのは避けられない。これがネットスラングでいう「モテ/非モテ」問題であり、英語圏では「インセル(incel)」という。「involuntarily celibate(非自発的禁欲主義者)」の略で、性愛から排除された男たちの自虐的な表現としてやはりネットで広く使われるようになった。

婚活サイトのビッグデータを分析すると、男の関心が「若い女」に集中するのに対し、女の好みが「金持ちの男」に集まることがはっきりわかる。その理由は、「消費文明に毒された」からではない。これが「人間の本性」であることは、歴史上のほとんどの権力者が若い女を集めてハーレムをつくってきたことからも明らかだろう。恋愛の基本形は「カネとエロスの交換」、すなわち売春なのだ。

「自由恋愛市場」では、男女の性愛の非対称性により、真っ先に脱落するのは「カネのない男」だ。昨今のさまざまな社会調査によって、低所得の男性の未婚率が極端に高いことが知られている。たとえば男の「年収別50歳時未婚率」において、年収100万円未満の47%、300万円未満の35%が50歳までいちども結婚したことがないのに対して、年収1000万円超の男の96%がすくなくとも一度は結婚している。

日本の50歳時未婚率は、1980年時点で男2.6%、女4.4%と「皆婚社会」だったが、その後急速の上昇し、2010年には男20.1%、女10.6%とそれぞれ大台を超えた。独身の女性も増えているが、その2倍の男性が結婚できないまま生涯を終えていく。これは一部の男が結婚と離婚を繰り返して(若い)女とつき合うからで、結婚できない男が女より多くなるのは進化心理学が予想する通りだ。現代社会は形式的には一夫一妻制だが、実態は「時間差の一夫多妻」なのだ。

男にとっての問題は、「(カネを)持てること」と「モテること」が一体化していることだ。逆にいえば、「持たざる者」は「モテない」。これが「無職+非モテ」で、社会からも性愛からも排除され、人格のすべてを全否定されてしまう。

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