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日本と韓国の「葛藤」はなぜ過激化したのか、すれ違いの構造を解く

両国の視点から考える

日本の「予防対抗措置」

2019年7月1日、日本政府は対韓輸出管理強化を発表した。とりあえずは半導体生産に必要不可欠な3品目(レジスト、フッ化ポリイミド、フッ化水素)を対象とした。さらに8月2日、輸出貿易管理令を改正し、韓国をそれまでの米国などと同等の「包括輸出許可国」から台湾やASEANなどと同等の「個別輸出許可国」に「格下げ」する措置を決定、8月28日から実施すると発表した。

それに激昂した韓国文在寅大統領は自ら先頭に立って日本の「経済報復」を非難するメッセージを対国民談話として発表した。韓国ではそれに触発され日本製品「不買・不売運動」や地方自治体などの対日交流自粛、日本観光の自粛などの動きが相次いだ。

こうした韓国の動きは、8月15日韓国独立記念日(光復節)の大統領演説で「日本との対話の用意がある」という比較的抑制されたトーンもあって鎮静化するのではないかと期待されたが、8月22日韓国政府は、事前の予想を覆して日韓GSOMIA(軍事情報包括保護規定)を破棄することを発表した。

この一連の騒動の端緒になった日本政府の「現状変更(=輸出管理の強化など)」は、韓国・文在寅政権に対する「予防的対抗措置」であるという見方が支配的である。すなわち、日本企業に対する元「徴用工」の損害賠償請求を認めた、2018年10月の韓国最高裁の判決に対して、有効な対策を提示できない政権への対抗措置である。

今後、日本企業に賠償を行わせるため在韓資産の現金化が強制執行され、日本企業に可視的な被害が及ぶことを見越して、そうさせないための予防的措置として日本政府が選択したと推測されたというわけだ。

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韓国は、徴用工問題について「説明不足」?

救済を受けられなかった被害者の人権は回復されるべきだが、それは、一切の債権債務関係は「完全かつ最終的に解決した」と合意した、1965年の日韓請求権協定という「国家間の約束」の枠内で行われるべきだろう。

韓国最高裁は、協定の対象範囲を非常に狭く解釈し非人道的な人権侵害に対する損害賠償は協定の範囲外だとし、協定の文言による制約を乗り越えようとした。しかしそれは、韓国国内での支持は得られたかもしれないが、交渉当事者の一方である日本政府、日本社会の同意を得られたとは言い難かった。換言すれば、外交問題として取り組まざるを得ないものであった。

 

しかし、判決以後の文在寅政権の対応は鈍かった。判決が日本政府や日本社会に与える不信感を緩和する動きは見られなかった。大統領自身が類似訴訟の弁護人の経験があり「日本企業が賠償すべき」との信念を持っていたのかもしれない。もしくは、それを大統領周辺が「忖度」したのかもしれない。

日本の一部には、この判決の責任を文在寅政権に帰着させようとする見解も存在する。しかし、当該最高裁判決の「原判決」とも言える2012年5月の最高裁小法廷判決は、李明博政権末期に出されたものであった。朴槿恵政権は、その判決が確定することが日韓関係に及ぼす「破壊的影響」を考慮して対応を模索したが、朴槿恵大統領の弾劾・罷免に起因して挫折を余儀なくされた。

さらに、そのために当時試みられた行政と司法との調整が、文在寅政権下においては違法な「司法壟断」とみなされ、朴槿恵政権当時の最高裁長官が逮捕される事態にまで及んだ(2019年1月)。