NHKが〈TVer〉進出で陥る、受信料の「どうしようもない矛盾」

取ったり、取らなかったり…

さらに来年の3月までには同時配信を始める方針とされているが、同時配信がスタートしたらTVerはどうなるのか。同時配信は一週間の見逃し配信とセットで行うと言われている。本体では受信料を払った人だけ同時配信+見逃し配信が視聴できて、TVerは一部の番組とはいえ誰でも見られる、というのはどうなのか。

同時配信+見逃し配信が始まったらNODはどうするのか。NODは一週間だけ無料にするのか。一週間は無料でその前のものは有料だとすれば、それはどんな理屈なのか。

また、高校野球は同時配信するのか。夏の甲子園は朝日放送がかなり早い段階から苦労してネット同時配信を進め、今ではスポンサーもつくようになった。それなのにNHKが同時配信に進出したら、完全に「民業圧迫」になる。春の選抜甲子園も毎日放送が同時配信を多くの人に届けるようになったが、NHKの出現で視聴数が減りかねない。それらにどう整合性をつけるのか。

 

ネットの「公共メディア」は成り立つのか

NHKはこれから、ますます説明が困難な状況に追い込まれる。TVerでの無料見逃し配信とNHKオンデマンドの有料配信、受信料を払ってないとスクランブルがかかる同時配信(+一週間の見逃し配信)との間で、どこかに矛盾が出てきかねないのだ。
これではN国に格好の攻撃材料を与えてしまい、NHKに何かあれば文句を言いたい一部のネット民が、ここぞとばかりに叩いてくるだろう。

結局、NHKを「公共放送」であるとする制度は、放送においてしか成り立たないのではないか。ネットも含めて、テレビ放送だけのメディアから脱却して「公共メディア」だと言い張ると、「公共性」のほころびがあちこちに生じてしまう。そのことをNHKはきちんと自覚すべきだ。

この矛盾から脱却するには、「公共メディア」を定義し直さねばならない。それだけでなく、国民の間で新しい公共メディアのあり方を共有してもらわねばならない。

そのためには、NHKが自ら議論を起こしていくしかないのだ。N国の挑発に乗って「公共放送のご説明」なんか放送するのではなく、「私たちの今後のあり方を、みなさんとご一緒に考えたいのです」と真摯に呼びかけるのだ。

NHKがいまやるべきは、これに尽きると私は考える。いつまでも本質に切り込むことを怠っていると、「公共メディア」構想なんて幻に終わってしまうのではないだろうか。

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