リクルートが、日本人の人生すべてを握る「恐怖の企業」と化す可能性

「超巨大データ企業」への変貌
鏑木 邁 プロフィール

ポテンシャルは中国共産党並み

リクルートHDが発表した決算資料などによると、2014年に上場した同社の時価総額は5兆6000億円と直近3年間で約3倍に伸び、国内企業トップ12位(8月26日時点)になるまでに成長した。

同社は2020年に人材関連事業で、2030年には人材関連と販促支援関連(レストラン予約など)で世界一になることを目標に掲げている。2019年3月期連結決算の売上高は過去最高の2兆3000億円に達し、米インディードなど海外の同業他社を吸収合併しながら、着々と事業規模を拡大しつつある。

一方で、人材事業の世界最大手アデコは2018年12月期売上高が約3兆円と、リクルートを約7000億円も上回っているうえ、ネット検索エンジン大手のグーグルが日本国内での求人情報のまとめサービスを19年から始めるなど、強力な競合他社もひしめく。業界を取り巻く状況は厳しさを増しており、世界一の目標達成に向け、リクルートHDはこれまで国内市場で蓄積したビッグデータを生かしたサービスの質の向上などに取り組む必要があるといえるだろう。

 

個人に紐付いたビッグデータの活用に際して、今回問題視された「プライバシー権」とどう折り合いを付けるかが課題となるのは言うまでもない。その反面教師が中国だといえるだろう。

近年の中国では、ファーウェイやテンセントなどIT企業の隆盛が際立っている。その背景には、人権を無視して個人の生活全体を記録し利用していることが背景にある。

わかりやすい例が、中国当局が普及させようとしている、AIで国民の信用度を測図る「社会信用システム」だ。ネット上の振る舞いだけでなく、納税など幅広い観点から個人を評価しようとするもので、一見、犯罪など反社会的行為の防止にもつながるようにみられるが、「危険人物」とされる人間を拘束する事態も実際に起きている。

日本では縁遠いできごとだと思うかもしれない。しかし、個人情報の収集とさらに広汎な利用で「ネット上での過去の行動履歴がその人物を表す」という考えが当たり前になってくれば、話は別だ。

当局に身柄を拘束されないまでも、進学や就職などライフステージの様々な場面で、「行動履歴の分析から、こいつはすぐに辞めそうだから落とそう」「不祥事を起こす可能性が高いとの数値が出ているから、同じくらいの能力の別の人間を採用しよう」というふうに事前にスクリーニングされ、不利益を被る人も出てくるだろう。リクルートのような企業は、こうした世界で圧倒的な強みを持つようになる。

ビッグデータは社会の効率化を生み出す反面、生産性の低い人間、協調性のない人間などを排除することもできる「諸刃の剣」となることを意識せねばならない。いまや国内最大、世界でも有数のデータ収集企業と化したリクルートの対応が、ひとつのベンチマークとなるのは間違いない。

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