経済格差が、子どもの「脳の発達」に影響を与えるという厳しい現実

是正のためには何ができるか
森口 佑介 プロフィール

親が「心の余裕」を持てるケアを

このような研究結果を突きつけられれば、子どものために何かできることはないかと考えずにはいられない。経済格差の是正が喫緊の課題であることはもちろんだが、そう簡単に解決する問題でもない。発達心理学の立場から何が提言できることはあるか。

実は、低所得家庭の子ども全員が前頭前野を活動させていなかったわけではない。裏を返せば、中・高所得家庭でも、前頭前野を活動させていなかった子どもだっている。

 

発達の格差を是正するために一つ重要なのは、子どもが強いストレスを感じない家庭環境を作るということだ。

その基本は、安心できる親子関係である。発達心理学では、親子の情緒的な結びつきを「アタッチメント」と呼ぶ。経済的に問題を抱えていても、親子関係がしっかり安定していて、子どもが安心感・安全感を感じることができれば、実行機能の発達には問題が起こりにくい。

こういう話をすると、わが国の場合は母親に責任を帰すことが多いが、それは間違いだ。母親であろうと、父親であろうと、さらには祖父母であろうと、信頼できる大人としっかりとした関係を築くことができればいい。

〔PHOTO〕iStock

安心できる関係を築くことが難しいのは、親のほうにも心の余裕がなくなっているケースが多い。ワンオペ育児という言葉があるとおり、子育てにおいて孤立している状況で、余裕をもって子育てすることは容易ではない。子どもの発達を支えるためには、国や自治体が親も支える必要がある。

筆者らは、自治体と連携して、子どもと同時に、家庭をいかに支援できるかを探っている。それほど簡単なことではないが、地道にやっていくしかない。社会全体でこの問題をもっと深刻に考える必要があるだろう。

子どもたちの未来が希望に満ちてほしい。心の底からそう思う。