科学より「感動物語」を重視する人々〜ケガは高校球児の宿命なのか

球数制限の是非、炎天下の試合の賛否…
原田 隆之 プロフィール

ここで、われわれが学ぶべき重要なことは、われわれの直観や経験がいかに当てにならないかという事実であり、謙虚にデータを分析することで明らかになる「真実」を冷静に受け入れるべきだということである。

足腰の鍛錬によいと「直観」で考えられてきたウサギ跳びは、膝を壊すという科学的事実が明らかになって、もう誰もやっていない。

しかし、炎天下で限界を超えるほどの投球を続けることは、肘を壊して選手生命を危うくするという科学的事実は誰も知っているのに、続けられている。

苛酷な試練に耐えてこそ一流の選手になるのだという「直観」のほうが重視され、球児たちの忍耐力を育てるという大義名分の下で、大人たちの「楽しみ」のほうが優先されている。

 

物語が好きな人々

なぜならば、人々はデータや科学よりも、「物語」が大好物だからだ。

たしかに高校野球の歴史には、数多くの感動の物語がある。われわれは、それを美しいと思い、感動する。もちろん、数々の名場面やフェアプレーにケチをつけるつもりは毛頭ない。

しかし、「物語」を見たいがために、高校生たちを炎天下の苛酷な状況に置いて、それを「教育」や「感動」の名の下に美化する風潮は、そろそろ再考すべきときである。肘を壊すだけでなく、命さえ奪われかねない。犠牲者が出てからでは遅い。

感動したけば、勝手にすればよい。しかし、そこに誰かの犠牲はいらない。