数学者を感動させた大学生の「鮮やかすぎる証明」はこうして生まれた

当たり前の事実を納得するために
瀬山 士郎 プロフィール

倍数チェス盤問題の発展形

この「倍数チェス盤」問題に巡り会ってから数十年後、私は大学で「遊びの数学」について講義をしていた。そのとき、ふっと思いついて、この問題をもう少し自分で考え、発展させてみることにした。その時に作ったのが、次の問題である。

8×8のチェス盤の1つの隅から、2×2の4マスを切り落とす。残った60マスの図形を4×1の大きさのカード15枚で覆いつくすことができるか(図6)。

この問題を思いついたときはとても嬉しかった。ガードナーの問題と同様に、これも覆いつくすことは不可能である。ではどうやって証明するか。学生たちに考えさせてみた。

授業の中でガードナーの問題とその証明は紹介していたが、正直なところ、私は学生が正しい証明まで答えてくれることはあまり期待していなかった。たぶん、とても難しいだろう。今度は単純な市松塗り分けではだめなのだ。

ところが、嬉しいことに、たった1人の学生だけだったが、見事に証明に成功した。証明方法は以下のとおりだ。

今度は、残りの盤を2×2の大きな市松模様に塗り分けるのである(図7)。すると4×1のカードは、盤上にどう置いても、白黒2つずつのマス目を覆う。したがって、このカードでは、盤の白と黒のマス目が同数でなければ覆うことができない。

ところが、8×8の盤から1つの隅の2×2マスを切り落とした盤では、大きな市松模様の白と黒のマス目は同数にならない。

証明とは、こんな発見を楽しむことにほかならないのだと思います。

数学はなぜ「証明」を必要とし、生み出したのか──。

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