数学者を感動させた大学生の「鮮やかすぎる証明」はこうして生まれた

当たり前の事実を納得するために
瀬山 士郎 プロフィール

補助線には複雑なものもあるが(そのような補助線はいわば鑑賞用で、自ら発見することは難しいです)、もう少し単純なものでも、引かれてみると「なるほど」と感心するものも多い。

たとえば、ユークリッドの『原論』では、「三角形の外角はその内対角のいずれよりも大きい」ことを平行線の公理を使わずに証明している(図2)。ユークリッドは、「直線外の点を通る平行線はただ一本ある」とする平行線の公理を使うことを、極力避けていたようだ。その姿勢がこの証明に現れている。証明のポイントは補助線である。

その補助線は、三角形の中線を2倍に伸ばした点を取り、頂点と結ぶものである(図3)。じつはこの補助線には、外角の頂点Cを通る辺ABの平行線を引いたのと同じ効果がある。

この補助線を使えば、三角形の内角和が180度であることを使わずに、外角が内対角より大きいことが証明できる(読者各自、証明を試みてください)。

この証明は、言われてみればすぐに納得できるだろうが、補助線の発見は初学者にとってはそれなりに難しいと思う。