純粋な悪…19歳で一家4人を惨殺した男の「恐るべき素顔」と「誤算」

圧倒的な悪は、周囲をも染めていく
永瀬 隼介 プロフィール

そして、一家の自宅に押し入った

雨の降る夕刻。部屋のドアは施錠されておらず、中には八三歳の祖母が一人。

《年寄り一人くらいなら、まずどんなことがあったって、力で負けることがないはずといった過信と、ひどく短絡的思考から、その眠っていたオバアさんの足を蹴り上げ、無理やり起こしたのです》

一家四人惨殺の詳細を綴った手紙は、それまで整然と並んでいた文字が崩れて細かくなり、とても同じ人物が書いたものとは思えない、俗に言うミミズがのたくったような筆跡である。実は光彦は一家の殺害場面を書くに当たり、幾度も断念し、それでもなんとか書き上げて送ってきた。

 

惨殺現場の描写は、犯人でなければ書けない異様な迫力に満ちており、わたしは肉筆の、血臭が匂い立つような文面を幾度も読み込みながら、神経が削られていく感覚に襲われた。

永瀬氏の渾身のノンフィクション作品。

果敢に抵抗する祖母を電気コードで絞め殺し、次いで、帰宅した母親と少女に包丁を突き付け、床に這わせ、母親を刺殺している。

保育園の保母に連れられて妹(四歳)が帰宅すると、少女に命じて食事の準備をさせ、三人で夕食。食後、家族の惨殺体が横たわる傍らで「時間潰し、気分転換」と称して少女を強姦。その強姦の最中、帰宅した父親を背後から包丁でひと突き。最後、泣き喚く四歳の幼女にも手をかけている。

一夜で一家四人の生命を、まるで虫を捻り潰すがごとく奪った光彦は、逮捕後もその冷酷ぶりを遺憾なく発揮した。被害者の遺族はベテラン刑事の、こんな悲鳴にも似た言葉を聞いている。

「三度のメシを腹一杯食い、夜は大いびきをかいて熟睡している。あいつは人間じゃありませんよ」

信じられないことに光彦は母親に頼み込み、高校時代に使っていた教科書、参考書、辞書を差し入れさせている。出所後に備えて資格の一つも取っておこう、と考えたのだ。当時の心境をこう書く。