旅好きセレクターによる旅へ誘う本紹介。今回は詩人の三角みづ紀さんに選書してもらいました。

本を読みたくなるのは、
むしろ、旅支度のとき。

国内外をあちこち旅するようになって7年ほど経った。昨年は最寄りの新千歳空港へ25回は行っただろう。仕事のための旅、バカンスとしての旅。支度すること自体が旅への入り口だと考えている。

実のところ、わたしは移動中にほとんど本を読まない。長いフライトだって案外あわただしい。散策した日の夜は、読むよりも書きたくなる。開くタイミングを失った本は鞄のなかでぼろぼろになるので、次第に持ち歩かなくなった。

岸本葉子さんの『女の旅じたく』は、いかにして荷物を少なくするかを綴ったエッセイで、読んだらたちまち旅にでたくなる。この一冊を読みながら、旅支度の真似をしてみたり。

女の旅じたく
岸本葉子 著/角川文庫(2011)
人気エッセイストの旅支度の流儀。旅先での着回し術、荷物を最小限にする工夫、外せない趣味の品などに、女の旅の楽しみが表れる。

管啓次郎さんの『ハワイ、蘭嶼』は、写真も多く収録されている旅のエッセイ集。詩人でありながら比較文学者でもある作者ならではの視点で、土地を見据える。神話に触れ、歴史を想起する。その土地ごとに膨大な時間の流れがある。本書を読んでから、ふと立ち止まり、自分がいる土地を深く想うようになった。

ハワイ、蘭嶼
管 啓次郎 著/左右社(2014)
美しい写真と言葉で綴る、ハワイと台湾南端の蘭嶼の魅力。青い海、温かな風、鳥の鳴き声。2つの南の島の物語に心が解放される。

冒頭で記したとおり、本を持ち歩かない不埒なわたしだけれど、詩集は例外。小説を読んでいて、予期しないタイミングで本を閉じないといけないとき、悔しい気持ちになる。でも、詩は短いものが多い。『日本の名詩一〇〇』は、文字通り名詩が詰まっている。旅のあいだに、上質なお菓子を食べるように詩を読んでいる。

繰り返し読みたい 日本の名詩一〇〇
彩図社文芸部 編/彩図社(2010)
中原中也、宮沢賢治、金子みすゞ、茨木のり子……。錚々たる詩人の代表作100篇を収録。旅先の心に思わぬ詩が染み入るかもしれない。

PROFILE

三角みづ紀 Mizuki Misumi
詩人。1981年鹿児島生まれ。主な詩集に『よいひかり』など。現代詩手帖賞、中原中也賞のほか、史上最年少で萩原朔太郎賞を受賞。

Photo:Toru Oshima Edit:Yuka Uchida