リクナビ「内定辞退予測」が踏みにじった、採用活動の本質

いい人財は集まる会社はここが違う
酒井 利昌 プロフィール

だからこそ、今回の件で、就活生たちが不信感を募らせているのは、言うまでもないでしょう。知らぬ間に、閲覧履歴などに基づいた情報が会社側に伝わっているのですから。

ライバル企業にエントリーをしている状況や、それらのページにアクセスしている状況が開示され、把握されているとしたら、不信感を募らせるのはあたりまえです。

たとえ、「選考に利用されることはありません」と明記していたとしても、本当に利用しないという確証はどこにもありません。

いくら信頼関係を築いていくプロセスを表面上おこなっていたとしても、それをされたことを知った学生はその会社に最終的に入社しようと思うでしょうか。

 

サイレント辞退の実態

日本経済新聞社が今年5月30日~6月7日に国内主要企業100社に行なった調査によると、主要企業の2割が学生からの内定辞退の連絡がない、いわゆる「サイレント辞退」に苦慮しているという結果が出ました。

企業側は、「自分の意思をはっきり伝えて」、「連絡がないことでチャンスを失う学生のことを忘れないで」と意見を出しています。

もちろん、学生が連絡をしないことはよくありません。

しかし、サイレント辞退されるということは、採用プロセスにおいて企業が学生との間で、十分な信頼関係を築けていない証拠でもあります。

学生に責任を押し付けるのではなく、自社の採用活動のあり方に目を向けなければ、問題は解決しません。

ここでご紹介したいのは、学生たちに本気で向き合う一連の選考プロセスが評価され、当該の学生との信頼関係を築くのみならず、口コミで評判となり、次年度以降の候補者形成につながっている、ある企業の事例です。

拙著『いい人財が集まる会社の採用の思考法』でも紹介した、大阪に本社を構える創業70年超の中小建設会社・三和建設の事例です。

2017年に「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の審査委員会特別賞を受賞したこの会社は、採用活動そのものの価値をブランド化する取り組み=「リクルーティング・ブランディング」を実践し、中小建設業にもかかわらず、採用倍率は20倍、内定辞退者ゼロ(2019年4月入社は内定者15名、15名入社)という成果を生み出しています。

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どうして、このような成果を生み出せるのか?

まず驚くべきは、新卒採用のキーワードを「理念共感」と「成長」とし、学生1人あたり140時間の5段階選考を行なっているという点です。

そして、選考プロセスの中では、会社が学生を見極める以上に、「学生が会社をどう見極めるのか」という観点を重要視しています。

そして、「学生が自ら答えを見出し、決意を固めるサポートだけ」に専念しています。

社長みずから「もはや選考というより社会人になるための研修といってよいかもしれない」と述べられるほど、学生と向き合った選考を行なっているのです。