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日本には円高が直撃…米中貿易戦争の深刻度、経済構造でこんなに違う

打てる手は少ない

米中貿易戦争に端を発した世界経済の動揺が続いている。現代の世界では、どの国も国際経済と密接に繋がっているので、貿易、資本取引、為替レートを通じて、国内経済が大きな影響を受ける。

しかし、影響の受け方は、国によって違う。なぜなら、経済構造が国によって違うからだ。

貿易戦争の影響を正しく評価するためには、各国の経済構造の違いを知る必要がある。以下では、米、中と日本を中心に、これを見る。

 

輸出依存度が高い中国は高関税に弱い

各国が世界経済とつながる第1のチャネルは、貿易だ。

図表1は、輸出依存度(GDPに対する財・サービスの輸出の比率)の推移を見たものだ。

中国の依存度がずば抜けて高い。1990年代に、中国工業化と歩調を合わせて輸出依存度も上昇し、2006年に36%を超える水準にまで達した。日本の高度成長期である1960年代において、輸出依存度が10%程度でしかなかったこと比べると、大きな違いだ。

1990年代以降の 中国の驚異的な成長は、輸出の増加によって実現したのである。

輸出依存度が高いため、何らかの理由で輸出が減ると、中国経済は大打撃を受ける。

これは、2008年のリーマンショックで実際に起こったことだ。

その後、中国経済は「新常態」(new normal)と呼ばれる構造に移行し、輸出依存度を下げてきた。それでも、現在20%程度であり、他国にくらべると高い。

これに対して、アメリカの輸出依存度は一貫して低い。

したがって、米中貿易戦争で高関税の掛け合いをすると、その影響は、中国経済においてより強く現れる。これは、実際に起こっていることだ(「自由貿易の理念を捨て、中国の成長を阻止する…米国の戦略は是か非か」参照)。

これに対して、アメリカ経済はいまだに悪化していない。

トランプ大統領が強気である背景には、こうした事情がある。

ただし高関税の影響は、輸出だけに及ぶのではない。輸入も影響を受ける。高関税によって国内物価が上昇するという問題がある。

この効果は、アメリカの方が強く働く。それは、工業製品のなかには、アメリカ国内ではもはや生産できないものが多いからだ。これは、アメリカの輸入依存度が高いことに現れている。

こうしたものは、仮に高い輸入関税がかかってもアメリカは輸入を続けざるをえず、このため、アメリカ国内で物価が上昇する。アメリカの企業や消費者は、この理由で、関税率引き上げに反対してきた。

ただし、これまでは、この問題が顕在化していない。事実、アメリカの消費者物価は、今年になってから5月までは、伸び率が低下していた。したがって、追加関税による物価上昇効果はなかったといえる。

こうなった原因は、これまでのリストの中に消費財が含まれていなかったことだ(さらに、後述のように元安が進んでいるので、それによって追加関税の効果が打ち消された可能性がある。また、中国の輸出企業が輸出価格を引下げている可能性もある)。

追加関税第4弾によって、物価上昇が顕在化する可能性がある。そうなると、大統領選を前にして、トランプ大統領は難しい立場に立つことになる。

図表1 財・サービスの輸出の対GDP比(%、資料:世界銀行)