これまで述べたように、日本では電子マネーも普及しておらず、その利用データを用いたプロファイリングもなされていない。それなら管理社会の危険もないわけで、そのことをありがたく思うべきなのだろうか?
そう安心してもいられない事件が起きた。
就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、就活学生の「内定辞退率」を、本人の十分な同意なしに予測し、38社に有償で提供していたのだ。
予測データの利用について、リクナビは、「採用の合否判定に使わないことを同意した企業にのみ提供していた」としている。
しかし、実際に使われなかったことをチェックできるのだろうか?
データは、1企業あたり、年間400万円から500万という かなり高い金額で売られたという。こうした高価なデータを企業が買ったのは、合否判定に使うためではないのだろうか?
ウェブサイトの閲覧記録から内定辞退率を予測したというのだが、こうした予測をするためには、閲覧記録と辞退率に関する大量の個人データを集め、内定辞退率を閲覧記録から予測出来るモデルを構築する必要がある。
だから、このモデルの作成者は、個人ごとの内定辞退データを持っている必要がある。
このような作業が本当に行なわれているとすれば、データ流出や不正売買の問題が生じた場合には、個人ごとの内定辞退データが流出することになる。
これは、AIを用いてプロファイリングされたデータではなく、直接の個人データだ。プロファイリングされたデータが使われるより危険なことである。
「驀進する中国は見ないことにして、島国に閉じこもって平和な生活を送れば良い」という願望は実現できないと、「中国が日本より豊かになることの戦慄すべき意味」で述べた。
同じことが、電子マネーやビックデータについても言えるのだ。