中国「超先進的電子マネー社会」の光と影〜一方、日本は何周も遅れ…

個人経済行動がすべて信用スコアに集約
野口 悠紀雄 プロフィール

電子マネーから得られる情報は極めて有用

現金通貨には匿名性があるが、電子マネーにはない。だから 電子マネーでの取り引きによって、膨大なデータが集まる。これは、ビッグデータとして活用できる。

これまでビッグデータとして利用されていたのは主としてSNSから得られるデータだが、それより詳細で正確だ。

香港のデモでは、参加者が地下鉄の切符を買うのに、電子マネーを用いず、現金を用いたそうだ。電子マネーの利用履歴という情報は、それほど強力なのである。

したがって、電子マネーの利用によって集まる大量のデータを利用すれば、さまざまな別のサービスが可能になる。

そうしたことが、中国では実際に行なわれている。次項で述べるように、アリババもテンセントも、信用スコアリング行なっているのだ。この結果は、融資の審査に用いられる。

スコアリングとは、収入や年齢、勤務先などの個人属性と、サービスの利用状況によって、特定の人に点数をつけることだ。AIがビッグデータを用いて特定の人の属性を推定することを「プロファイリング」というが、信用スコアはその一種である。

アリペイの場合は、アリペイの決済データの他、ネットショッピング淘宝(タオバオ)の利用状況、公共料金の支払い状況なども勘案してスコアリングされる。テンセントの場合は、SNSのデータも用いられる。

 

信用スコアリングを用いた融資が成長

実際のサービスとしては、アリババグループが提供する「芝麻(じーま)信用」がある。2015年1月に始まり、18年時点でアクティブユーザーが5億2000万人だ。

テンセントは、信用スコア「微信支付分」を2019年1月に発表した。北京、上海、広州、深圳の4都市ではすでに利用できる。2019年中には中国全域で利用できる予定だ(テンセントは、「騰訊信用」という信用スコアを18年1月にリリースしたが、これは1日で中止された)。

実際に融資を行なうのは、アリババ系は浙江網商銀行(マイバンク、以下「網商銀行」)、テンセント系は微衆銀行(We Bank)だ。

網商銀行は、オンライン銀行として主に中小零細企業向けのローンを提供する。2015年5月に設立認可された。

微衆銀行は、2014年に民間ネット専業銀行として設立認可された。

両行を合わせると、融資残高は、18年末で、1700億元を超えた。

スコアが高いと、融資を受けられるほかに、さまざまな特典が受けられる。例えば、病院の優先的予約ができる。ホテルやレンタカー、バッテリー、レンタルバイクのデポジットがいらない、海外旅行に行った時の免税申請を並ばずにできる、などだ。

このような恩典が受けられるので、スコアを高めるため、交友関係や、免許証、不動産所有の証明書などの情報を提供する人も多い。