作家で獣医師でもある片川優子さんの連載「ペットと生きるために大切なこと」。前回は「熱中症」についておつたえした

今年1月、愛犬を散歩させていた70歳の女性が大型犬に噛まれて大ケガをおうという事件があった。突如大型犬が愛犬のミニチュアシュナウザーに向かって突進、それを守ろうとして飼い主が噛まれてしまったのだ。また、つい8月19日にはアメリカ・デトロイトでピッドブル3頭に噛まれた3歳女児が死亡する痛ましい事件も起きたばかりだ。

ではしつけとはどういうことなのか。しつけないとどんなことが起きる可能性があるのか、しつけはどのようにすればいいのか。具体的にお伝えしよう。

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飼い犬のしつけができなかった
結果こんなことに……

ある日勤務先の動物病院に、けむくじゃらの犬がやってきた。おそらくトイプードルなのだろうが、しばらくトリミングをしていないらしく、毛刈り前の羊さながら、目も耳も埋もれてよくわからないくらい毛が伸びている。

よくよく話を聞いてみると、小さい頃はトリミングができていたのだが、成長するにしたがって徐々に攻撃性が増していき、トリミングを断られるようになったとのこと。飼い主のお父さんの腕には咬み傷を縫ったあとがあり、お母さんは怖がって触れないと言う。どうしようもなくなって藁にもすがる思いで病院に来たのだと話していた。

結局その犬は麻酔をかけ、全身にバリカンをかけることになった。いざ刃を入れてみると、あまりに伸びすぎた毛は複雑に絡まり合い、絡まった毛に引っ張られた皮膚には一部炎症が起こっていた。そして口元の毛からはいつのものかわからないフードが発見され、歯にも毛と歯石が絡まり合ったものがくっついており、重度の歯肉炎を起こしていた。

トイプードルは毛が抜けず、一生伸び続ける。トリミングができないと、見た目が大変なことになってしまうばかりでなく、皮膚病や歯周病などの病気につながる可能性がある。

その犬の気質も大いに関係することは確かだが、幼い頃からしっかりしつけていれば防げた問題だっただろう。

しかし結局その犬は約1年後、また羊のようにもこもこに毛が伸びた状態で病院に戻ってきた……。

毛がのびすぎると衛生上の問題が生じることも Photo by iStock