―エルトン・ジョンは少しクレイジーだけどハッピーなポップスターだというイメージがありましたが、本作ではかなりダークな側面が描かれています。

タロン:エルトンのような偉大なアーティストがクリエイティビティをフルに開花するときって、必ずしもハッピーだったり心が満ち足りていたりしていないかもしれません。

エルトンは両親に愛されず、彼の存在やアイデンティティは否定されていました。もちろん天賦の才がありましたが、自己否定感や喪失感に悩まされていたからこそ、彼の才能がほとばしり美しい旋律を奏でた……。そういった、アーティストの心にある矛盾や葛藤をも本作は深く考察しています。

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あえてエルトン・ジョンのモノマネをしなかった

―本作が非常に高く評価されている点のひとつに、タロンさんがサウンドエフェクトを使わずに、自分なりの表現法で彼の曲を歌ったことがあります。現代の録音技術を駆使すれば、タロンさんの声をエルトンそっくりにできたと聞きました。

タロン:できるだけ、この物語を“真実”として語りたかったんです。もし、エフェクトを使ってエルトンそっくりの声で僕が歌ったら、それは、心の奥底から湧き出たピュアな表現ではなくなってしまう。

録音技術を使わずともエルトンの声や歌い方のマネをすることもできましたが、それだと単なる彼のパフォーマンスのモノマネになってしまい、彼が感じた瞬間瞬間の素のエモーションを観客に感じさせられなくなってしまうと思ったから、僕なりの方法で歌い、僕たちなりのエルトンを作ったんです。

〔PHOTO〕岡田康且