香港デモの陰でうごめく「無責任な外国諜報機関」の存在に注意せよ

米国民主主義同盟とは何か
河東 哲夫 プロフィール

汚い工作は米・中・ロ、お互い様

物事にはウラがあり、そのウラには果てしがない。米国のNGOを非難するロシアや中国も、米国を上回る資金をつぎ込んで、世界中で工作活動を展開している。

ロシアの前身ソ連は、日本でも野党勢力に資金を回していたし、共産主義でなくなった今のロシアは、なんと共産主義とは正反対の欧州右翼勢力を支援して、欧州の政情不安定化を煽っている。

社会に不満がたまっていると、わずかな工作でこの不満に火をつけることができる。以前は旧社会主義国が西側NGOによく火をつけられ炎上していたが、今は西側でも格差と不満が広がっているので、ロシアや中国の工作で火をつけられやすくなっている。

 

なお、米国や欧州も、民主主義という建前論一本槍ではない。カネでどうとでも動く者もまた多数いる。

例えば、イラク戦争で悪名をはせた米国の「傭兵会社」ブラックウォーターを設立したErik Princeは、香港にFrontier Services Groupを設立、そこを足場に中国の海外警備員養成を手伝っているとの報道がある。

警備会社が海外で中国系工場を警護するような場合、やることは傭兵と似てくるので、彼にも顧問が務まるのである。

彼はトランプ政権の教育長官Betsy DeVosの兄弟で、スティーブ・バノン――トランプの大統領選の参謀――とも親しいのだが、そのバノンは6月、香港の民主化集会で登壇している。彼は「民主主義」よりも、習近平政権の足を引っ張る方に関心があるのだろう。魑魅魍魎の世界だ。

日本も戦前は、満州や上海を拠点に策謀・謀略の限りを尽くした。「ラスト・エンペラー」の溥儀を天津から満州に秘密裡に拉致するとか、男装の女性スパイ川島芳子が満州皇帝溥儀の皇后婉容に近づき、麻薬を用いて篭絡するの類である。

今、日本にも情報・諜報機関を作れという声があるが、情報はまだしも、工作だけは絶対許してはならない。戦後70年余の平和に慣れた日本人には、こうした活動はもう無理なのだ。機関を作っても、失敗と失態を重ねて、長官のクビはいくつあっても足りず、それよりも多くの人間を悲劇に巻き込むだけだろう。