香港デモの陰でうごめく「無責任な外国諜報機関」の存在に注意せよ

米国民主主義同盟とは何か
河東 哲夫 プロフィール

西側NGOの敗北と無責任の歴史

しかしこれ以降、西側のNGOによる「民主化啓蒙活動」の成果は芳しくない。政権転覆に成功しても、民主化や力強い経済発展は起きていない。多くの場合、政権転覆の結果、新しい権力者が国内の利権を手に収めて、腐敗した強権政治を続けることになるのである。

最悪の場合には、「民主化」で国内の微妙な力、民族、クラン、利権のバランスが破壊され、血で血を洗う内戦状態となる場合もある。イラク、リビア、シリアの場合がそれである。そしてその時には、西側のNGOは何の責任も取らないし、取る能力もない。

だから筆者は、以前から親しくしていた米国大使になぜ自国のNGOをもう少し抑制しないのか、と聞いたことがある。米国のNGOが反政府活動を助けていることで、その国の大統領はすっかり反米になり、アフガニスタンでの対テロ戦争のために貸していた空軍基地から米軍を追い出す気配を見せていたからだ。

米国の大使は、少し悲しげな顔をして言った。「その点は自分も気がついている。しかしNGOには米国の政党が後ろについているので、大使の自分でも何ともできないのだ。」と。

 

一方、そうしたNGOを支援する立場の米大使館員(つまり国務省は一枚岩ではない)とも論争したことがある。

筆者は「このような国で民主化を支援しても、本当の民主化は起きず、混乱を呼ぶだけだ」と述べたのに対して、その館員は「そうかもしれない。しかし政府を倒して社会を揺り動かさなければ、何も起きないではないか」と答えた。要するに、政府を倒すことばかり考えて、その後のことは野となれ山となれ、なのである。

だからその国の大統領はその後、米国のNGOのほぼ全ての活動を禁止し、国外に追放した。ロシアでもある上院議員が2015年、米欧の「望ましからざる」NGOのリストを作り、その閉鎖を提唱した。

そこには、これまで言及した団体の他にFreedom House、Open Society、ポーランドやウクライナの団体等が挙げられている。

これら団体は、米国政府の指揮で動くわけではない。NGOが海外で騒動を起こし、米国政府を難しい立場に追い込むこともある。米国政府は、「民主化」と言われると表向きは支持せざるを得ないのだが、軍を送って失敗したイラクの二の舞は金輪際したくないからだ。

例えば2008年8月、グルジアのサカシヴィリ大統領がロシアを挑発しすぎて、ロシア軍による武力侵攻を招いたが、こうなる前には米共和党の故ジョン・マケイン上院議員が何度もグルジアを訪れて、サカシヴィリ大統領をおそらくけしかけていたことが、こうした事態を招いたと思われる。

マケイン議員は、共和党傘下のRepublican International Instituteの会長を務めていたのである。結局、当時のブッシュ政権は軍を送るどころか、ロシアを制裁することもなく、グルジアはロシア軍に領土の一部を制圧されたまま今日に至っている。