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香港デモの陰でうごめく「無責任な外国諜報機関」の存在に注意せよ

米国民主主義同盟とは何か

背後の米国民主主義組織とは

香港ではもう2カ月以上、週末になると香港の中国化に反対する青年達のデモが荒れる。そしてロシアのモスクワでも、この1カ月以上、週末になると民主化を求める青年達の集会で機動隊が動員される。

時期が一致しているのは偶然だが、双方とも明確なリーダーを欠いているのに、SNSを通じて何となくまとまった行動を示す点、そして暴力行為を極力控える点ではよく似ている。

こういう時、世界の情報プロは、何者かが背後にいて糸を引いているのではないかと考えるもの。実際中国でもロシアでも、「米国の民主化支援団体が裏で糸を引いているのだ」という声がちらほら聞かれる。

「中国やロシアの政権転覆を狙う米国諜報機関、つまりCIAが糸を引く全米民主主義基金(National Endowment for Democracy, NED)と、そこから助成金を得ている諸NGOが青年達に、集会のやり方等を指南しているのだ」というわけだ。本当だろうか?

 

まず、NEDはどういうものなのか。ホームページには建前論しか書いてない。しかしNEDについては英語、ロシア語、その他様々のメディアに記事がある。その多くはロシアの宣伝機関がカネを出して書かせたものなので、眉に唾をつけつつ、まとめてみると、次の姿が浮かび出る。

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NEDが作られたのは1983年。米国レーガン政権の時代だ。この頃、「イラン・コントラ事件」とか「ニカラグア政権転覆工作事件」などが起こり、いずれも失敗してCIAの失態が白日の下にさらされた。

そこでNEDが作られ、毎年約1億ドルの予算を国務省等から配布され、海外での民主化啓蒙活動に携わるNGOに配分し、宣伝工作活動を代行することとなったのだ。

資金の3分の1は共和党傘下のNGOであるInternational Republican Institute、同じく民主党のNational Democratic Instituteに配分する暗黙の約束がなされていたので、以後、毎年、共和党・民主党は超党派でこの予算を自ら議会で提案、採択し続けたのである。

2003年頃、筆者はある中央アジアの国で大使をしていたが、ここでも米国の「民主化を支援する」NGOは活発に活動していた。

専制主義国での民主化は、言葉上は美しいが、ほとんど全ての場合、その国の国民が大迷惑を被って終わる。と言うのは、専制主義国で「民主化」を欲する者のほとんどは、国の利権に自分もありつきたい一心で、国民のことなど考えていないからだ。

そういう国でレセプションに出ると、環境保護とか人権保護とかの団体名を刷った名刺を持った得体のしれない者達がすり寄ってくる。目指すものは、外国大使館がその国の民主化のために出す資金なのだ。

NEDは当初、いくつかの成功例を築いた。特に1989年ポーランドで、自主労組「連帯」を押し立て、選挙を経て民主化を実現したのが好例である。

そして2003年にはグルジア(ジョージア)でサカシヴィリの「バラ革命」、同年ウクライナでの「オレンジ革命」、そして2010年からの「アラブの春」や2013年末のウクライナ民主化運動では、大衆が大規模な集会を続けることで、政権を転覆、あるいは追い詰めている。

これらは社会に鬱積した不満のエネルギーが表面化したものだが、これを、SNSを使って組織する手法等は、米国や西欧の「民主化を支援する」NGOが授けている場合が多い。

2013年末のウクライナの場合、米国やオランダの大使館が計14万ドルほどの資金を1つのインターネット・テレビ局に支出したとの報道がある(2014年3月25日 Readersupportednews.org, Steve Weissman)。そして当時のヌーランド米国務省欧州担当次官補は、反政府の集会に顔を出して、参加者を激励している。

1989年のポーランドや東欧諸国の場合、民主化は一応成功したことになっている。それは、これら諸国の多くには戦前の民主主義の伝統があったし、隣接するEUから投資も行われたからだ。