「日本に暮らす韓国人」が、いまこの国で直面している不安

じっと我慢している人々の声
伊東 順子 プロフィール

地下鉄に乗るのが怖い

「日韓がもめる度に、一番、辛い立場に立たされるのは在日韓国人だと思うんですよね」

古い友人が私の前回に記事を読んでそんなメールをくれた。在日韓国人3世の彼女は自身の経験をこう振り返った。

「前は韓国名でツイッターをやっていたんです。そうしたら何を書いても、『文句があるなら、韓国に帰れ』と言われる。それは政治的なことでなくてもです。たとえば、有名店のラーメンが期待はずれだったみたいなツイートにも、もう日本にいなくて結構、韓国のラーメンはパクリでしょ。韓国人は●●でも食っておけばいいとか。そういうレスが一晩に10も20もつくのです」

〔PHOTO〕iStock

あくまでネット上のことでしょと思う方もいるかもしれない。しかし、こうした言葉を向けられる側はそうは思えない。女性が続ける。

「たかがツイッターと思われるかもしれません。でも、中には本当に怖い書き込みもあります。思い出さないようにしていますが。そうすると、街を歩いたり、地下鉄に乗るのも怖くなります。あれを書いた人が、この中にいるのかもしれない。心臓がドキドキして、途中で電車を降りてしまったこともあります」

別の在日2世の知人は何十年も近所付き合いをしてきた人に、今回のことで初めて「韓国、ちょっとどうしたの?」と言われたという。

「子供同士も仲良くて、旅行に行ったらお土産を交換したり。何十年のお付き合いで初めてのことです。日本の一般の人も韓国が嫌いになっているようで、不安になります」

 

親の代から日本で会社をやってきた。税金も、従業員の給料も、保険も年金も、きちんきちんと払ってきた。定年退職した人も集まって毎年新年会もやったり、日本人従業員とも良好な関係を築いてきたと思っているという。それが突然、昨今の日韓関係の悪化のせいでハシゴを外されたら――彼らがそんな不安を抱いているであろうことは想像に難くない。

「今の日韓関係についてですか? そりゃ、日本政府にも韓国政府にも言いたいことはありますよ。でも、言っても仕方ないでしょう。在日の話など、聞いてくれますか?」

いや、そうした声こそが聞かれなければいけないでしょう。一部の住民の不安は、社会全体の不安につながる。政府や自治体は、じっと我慢している、小さな声の人々に耳を傾けてほしい。外交問題とは別個に、国内のマイノリティーや観光客に格別な配慮をすべき時だと思う。