また、妻からバトンタッチする形で育休を取得する場合、「赤ちゃんは世話をしてくれる人になつく性質がある」という点への注意も必要である。

例えば子供が母乳によって泣き止むことに慣れている場合、妻がいない中で子供に強く泣かれてしまうと、武器を持たずに敵に追い詰められたようなパニック状態に陥る。私はこのパニックの中で、「ダメ元で胸を見せてみてやっぱり泣かれる」「泣き声に奇声で対抗してさらに泣かれる」といった奇行を繰り返した思い出がある。

ただ、子供がひとたび今は父親しかいないという事実を飲み込み頼ってくれるようになると、自分にしかできないあやし方であやせるようになり、そうして生まれた親子の絆は子供が大きくなってからも強く残ると実感している。

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夫婦両方のキャリア維持につながる

このような育休生活から10年が経過し、現在私たち家族は日本を離れオーストリアで暮らしている。この10年間、記事には書ききれない苦労も多く経験したが、結果として夫婦2人ともそれぞれのキャリアを築くことができている。

私は研究者としてのキャリアを続け、上述の育休復帰後に上げた成果がきっかけでアメリカの国立研究所にポスドク職を得ることができた。その後下の子が生まれ、現在はオーストリアに長期の職を得ている。また妻は、以前の記事にまとめたハラスメントとの壮絶な戦いがあり博士取得後に職種を変えたが、現在は新たなキャリアを順調に積んでいる。

このように、男性が育休を取得し、育児にかける時間や労力の夫婦間の偏りをなくすことは、夫婦両方のキャリアを継続させる可能性を高める。この点は、育休を取得してみて私が感じた男性の育休がもたらす最も重要なメリットのひとつである。また同時に、この点は長期的には、夫婦2人分の収入が長期間に渡って確保できるという家族単位での経済的なメリットにつながることも強調しておきたい。