前述したように、男性が育休を取得しない主な理由のひとつに「取得しづらい雰囲気」があるが、この雰囲気の裏には「皆と違うことを良しとしない」、日本特有の同調圧力が潜んでいると私は考えている。

この圧力は同調させる側をも縛り付けてしまうため、仕事を進める上で新しい発想を生む可能性を削ってしまう危険がある。しかしだからこそ、その雰囲気を振り切って育休を取得することは、職場からは得ることができない新しいものの見方を獲得するチャンスでもあるのだ。

私の場合も、やはりこの雰囲気が当時の職場にあり、同僚や上司から育休について「大変だね」と遠回しに揶揄されることが日常的であったが、育休から復帰後、職場の研究グループがそれまで取り組んでいなかった方向から研究を進めることができ、育休前とは違う視点に立った新しい成果につながった。

嵐のような育休生活で得られた親子の絆

では、男性による育休中の生活とは実際にはどのようなものなのか、私の体験の一部を紹介する。

まず、育休を取得する際に男性が見落としてはいけないのが、出産による女性の体調の変化は産後数ヶ月で落ち着くほど甘くはない、つまり女性は仕事に復帰後も体調面でも精神面でも出産・育児と戦い続ける、という点である。

例えば女性が母乳育児を継続しながら職場復帰する場合、授乳の間隔が長くなると母乳の分泌に関する深刻なトラブルへと発展するおそれがあるため、仕事中に何らかの母乳対策が必要となる。

この問題に対して私たちは、車で往復1時間以上かけて妻の昼休みに職場まで子供を連れていくという対策を取った。これにより授乳間隔の問題は改善したが、頻繁に泣き叫ぶ生後半年の乳児を毎日1時間以上も車に乗せることは思った以上に困難であった。

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機嫌のいいタイミングを見計らい車に乗せ、車中でぐずり始めると、パ行の声で機嫌が良くなった経験を頼りに、ひたすら「パピプペポー」と叫びながら運転していた。このことは今では家族の笑い話となっているが、当時はとにかく必死であった。

こうして育休中は、午前は妻を見送り子供が寝ている隙に家事をこなし、昼にお弁当を用意して妻の職場に向かい、帰り次第残りの家事をこなし、そうこうしている間にすぐに夕食の支度の時間になる、といった嵐のような生活を送り、育児の大変さが身に沁みてわかった。